
脊椎動物であるニンゲンは何らかの疾患があると、血管が原因にされて動脈硬化が批判を浴びます。そして高血圧や、溜まりすぎた脂質やコレステロールが悪者にされるという理不尽な扱いを受けます。毛細血管を含めて10万キロに及ぶ血管があれば、その一部が原因として批判を受けるのは仕方ないかもしれません。 スポンサードリンク
ーそもそも動脈硬化って何?ー
動脈硬化をひとことで言うと、全身の動脈の内皮(血管壁内)に、低比重の小型LDLやマクロファージ、中性脂肪などが溜まることが原因で、硬度を増しながら弾力を失っていくという血管の変化の動態のことです。
初期の動脈硬化は小児の頃に始まり、長い年月を経て次第に柔軟性を失っていくので、全てのヒトの血管は動脈硬化へと変化している途中ということになるので動態とも言えそうです。ある程度の年齢を超えると老化とも言われます。老化とは電子を失うことで正確には酸化と言いますが、有機物の酸化は腐敗になるのであまり正確に書くと誤解を招くかもしれません。
生活習慣病として問題になっているのが梗塞や血栓の元になるアテローム性動脈硬化と言われるもので、血管壁に溜まりすぎたLDLやマクロファージや中性脂肪で形成された隆起(粥状プラーク)の場合、血栓とともに血管内を飛んで行くと、肺動脈や心筋を覆っている冠動脈や脳などで梗塞を起こします。また、血管の脆さから動脈瘤が出来やすくなります。
ーコレステロールは悪玉?ー
コレステロールも脂質も人間には必要不可欠なものです。脂質は肝臓で代謝されて中性脂肪になり、筋肉でグリコーゲンとして蓄えられて最終的にATPとして運動で消費します。血管壁にLDL(コレステロール)が全く蓄積しなければ強度のない血管のまま成長して危険な状態に陥ります。新生児肺高血圧の場合は平滑筋が急速に発達してそれに対応しています。
コレステロールという物質は一種類しかありません。リポタンパクで覆われたコレステロールの塊のLDLのサイズが小さいので血管内皮細胞の隙間に入り込めるというだけで、HDLや中性脂肪を運搬するカイロミクロンは血管壁に溜まりません。なので、カプセルから出てしまえば善玉も悪玉もありません。LDLに入っていたLDL由来のコレステロールとHDL由来のコレステロールであってどちらも同じものです。
そして、動脈硬化の原因になる場合でも、血管壁に直接コレステロールが溜まるわけではありません。LDLが血管の内膜に入り込んで、リポタンパクの膜が破壊されるとそこにマクロファージやら白血球が集まってきますが、捕食細胞でもあるマクロファージはコレステロールを捕食したままそこに埋もれてしまいます。
ー動脈硬化の悪化防止と改善ー
肥満の脂質異常症が動脈硬化を悪化させると言われています。そこで、仮にDHAのサプリで中性脂肪を減らすとします。総コレステロールは変わらないのでLDLコレステロール値は逆に増えます。許容範囲を超えるほど悪化すれば脂質制限とコレステロール制限が必要になります。食事制限だけでなく、運動をしない限りサプリを摂っても動脈硬化は悪化します。
動脈硬化はDHAでは避けることができませんが、相変わらず深夜のテレビCMでは血液サラサラ成分などと言われてDHAを含んだ魚油が販売されています。動脈硬化対策にはなりますが、なってしまえばほとんど意味はありません。血栓が出来にくくなるという作用はあるので、梗塞も起こりにくくなります。
治療としては、抗凝固剤ヘパリンの長期経口投与になります。ワルファリンは血栓予防薬として使われています。抗血小板剤としてアスピリンも血栓予防になりますが、鬱血や充血の薬として血管拡張剤としてプロスタグランジンE1(オパルモン【般】リマプロスト)などを使っている場合はアスピリンは使えません。
動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞におびえてサプリや薬を飲むより運動をしましょう。

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