
切除してもリスクよりベネフィットの方が大きいという正常な臓器では、第一近親者に2名の乳がん歴がある場合の正常な乳房が考えられます。要らない物は早めに切除してしまおうということで、炎症を起こしやすい虫垂や乳房を摘出する者がいるようです。子宮と乳房の摘出が盛んに行われているのは再生医療や遺伝子治療に逆行しているようで倫理的にどうなのかと思いますが、稀に脾臓がいらないと言う人もいます。 スポンサードリンク
◇知名度の低い脾臓の存在感
早押しクイズで「五臓六腑といえば」という答えは脾臓が多くなっています。それくらい知名度が低いという事でしょうか?また、切除対象として虫垂や脾臓を候補に挙げる人もいますが、どちらも免疫に関する器官です。脾臓は最大の免疫器官であって摘出した患者は疲れやすいと言いますが、最も危険なものは感染です。脾臓を摘出する前に肺炎球菌ワクチンを受けるのが一般的になっています。
赤血球の寿命は120日です。赤血球としての機能を失ったものは柔軟性を失って血管中に詰まる原因になるので、脾臓の赤脾髄を通過する時に濾過されて鉄分だけ取り込まれます。赤血球は分解されて肝臓に運ぶという機能を持っています。
脾臓には白脾髄と赤脾髄があり、白脾髄(はくひずい)は白血球・Bリンパ球・Tリンパ球を産生して、赤脾髄は赤血球の回収とマクロファージなどの捕食細胞を集めて古い赤血球を捕食させて肝臓に送ります。
脾臓の血管として心臓からの脾動脈と、肺に向かう脾静脈によって肝臓の門脈へと運ばれます。ヒトの三種類の血管を聞かれて、動脈、静脈、門脈という人もいますが、知能検査(WAIS-R)で毛細血管ではなくて門脈と答えた場合は0点ではなかったような記憶も・・・という余談です。
日経メディカルの記事では、「脾臓は血液中の異物を取り除くフィルター」などと書かれています。何となく正確さに欠けるようで、白血球の産生が抜けています。やはり存在感が無いようです。
◇無くても生きていける臓器
虫垂と脾臓は無くても生きていくことはできます。交通事故などで脾臓が障害を受けた場合は摘出手術が行われます。血管内から微生物や細菌を濾過する機能がなくなるので、感染を起こすと抗生物質に頼るしか方法はありません。
血液の貯留機能もある脾臓ですが、循環器系がそれを代行することで出血に対処できるという機能もあります。しかし、脾臓が無くなると肝臓や他の臓器が同じ機能を持つようになります。肝臓によって古い赤血球を取り除いたり、感染に対して防御力を高める機能が出てきます。また、溶血性貧血の場合では脾臓の切除で治ることもあるという扱い方の難しい臓器です。
五臓六腑になぜ膵臓が無くて脾臓があるのか?ということですが、実際に消化吸収を行っている臓器は膵臓なので、脾臓は含めないという説もあります。脾臓の疾患も当然ありますが、それらの疾患を治すより摘出する方が簡単という判断もされかねない脾臓の存在はどこにいったのでしょう。

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