
ちょっとした問題があれば摘出が考えられる脾臓です。脾臓腫大や脾臓損傷などがありますが、その原因になる疾患は数多く存在します。感染症であったり、自己免疫反応、赤血球の異常などによって脾臓の腫大が起こると脾臓自体に機能的な問題が無い場合でも、周りに悪影響を及ぼすという理由で摘出されることがあります。 スポンサードリンク
◇脾臓が腫大する原因と影響
脾臓の腫大(脾腫)自体は器質的異常はないので、脾臓の疾患とは言えませんが、脾臓機能亢進症が起きやすくなって血液成分を溜めこむことになります。また、骨髄の造血機能に障害があった場合は脾臓によって血液が作られるため、脾腫が起きます。脾腫はある意味脾臓の機能でもあるので、原因を取り除けば脾腫は治ります。
原因疾患が取り除けない場合は脾腫によって周りの臓器に影響を与えます。腹部膨満感や背中の痛みが起きてきます。肥大した大きさによっては摘出が行われることになります。肥大が限度を超えると痛みだけでなく脾臓の血流も悪くなるため脾臓の壊死が始まります。
また、脾臓で赤血球の破壊が起きると貧血になったり、白血球が作られないことで免疫力の低下とともに感染症状を起こしやすくなり、血小板の減少によって出血傾向になってしまいます。
◇脾臓摘出と関連疾患等
そもそも脾臓腫大の原因疾患として、性病や結核、ウィルス感染症や肝炎、貧血、白血病などの血液のがん、自己免疫性疾患、肝硬変、アミロイドというタンパクが全身の臓器に溜まるアミロイド―シス、全身に炎症が起きるサルコイドーシス、突発性血小板減少症紫斑病などによって脾臓が腫脹して摘出の危機に面します。肝臓の門脈圧亢進による脾静脈血の血行障害なども影響して、骨髄線維症の場合は大きな脾腫が出来ることから摘出が行われます。
過去では脾臓に損傷が生じると、必ずといっていいほど摘出が行われて、損傷や腫大の原因特定は摘出した後に行われるのが一般的でした。脾臓の生検や組織の切除は血小板の減少が原因となって、止血が行われなくなるので、その困難さから脾臓自体の手術はほとんど行われませんでした。
基本的に手術が必要な患者では脾臓の摘出が当然のように行われていましたが、現在では脾臓のダメージが小さい場合は輸血を行いながら治療をすることもあります。自然治癒を期待することもあり、ほんのわずかな裂孔であれば手術で治療を行う場合も出てきました。
◇脾臓が原因の疾患
脾臓の摘出によって肝臓などの関係する臓器や血液病が治りますが、脾臓にも原発性の疾患はあります。
・突発性血小板減少症紫斑病
基礎疾患や薬剤の影響は関係なく、血小板数が減少して出血が止まらないという症状が出ます。皮膚の外傷や鼻血、月経などが考えられますが、特に脳出血の場合に致死的な状況を招くことがあります。胃や十二指腸潰瘍の際も出血しますが、これはピロリ菌が影響しているともいわれて、ヘリコバクターピロリ菌の除菌を行うと50%前後の患者の血小板数が増加することが分かっています。ステロイドによって治療が行われますが、無効な場合は脾臓の摘出が行われます。
・原発性脾腫瘍・門脈亢進症
脾腫瘍には悪性リンパ腫や血管腫など多種の原因による腫瘍が発生しますが、画像診断で原因を特定できるのは稀です。悪性が否定できない限り摘出が行われます。門脈亢進症の改善のためにも摘出が行われて、インターフェロンによる治療の前にも血球減少が問題になるため脾臓の摘出が行われて、それぞれの改善が見られます。
結局、問題があれば摘出を行うということで、脾臓自体の手術はほとんど行われないのが現状です。脾臓の再生医療も重要性を感じないのか進展を見せていません。

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