
新生児マススクリーニングとは、治療しないまま放っておくといずれ障害が出る遺伝性の疾患を未然に防ぐための検査で、新生児の先天的な代謝異常を知ることで発症する前に治療を行うというものです。出生前診断ではなく、出生後に行われる検査です。 スポンサードリンク
◇新生児マススクリーニングの必要性
あらかじめ新生児の代謝異常の発症予測をすることで、脂質代謝異常による新生児の突然死などを防ぐものです。スクリーニングの対象としては早期発見と早期治療が行えるものに限定されています。2~3歳で確実に発病するライソゾーム病は発病後では最新の治療法を使っても治すことは不可能ですが、事前の治療で発病を防ぐことができます。
主に治療が簡単に行える疾患が対象ですが、難病対象の疾患であっても事前の治療によって良好な経過をたどるのが通常です。医療費は公費負担になっているため、個人的な負担はほとんどありません。現在の検査方法の主流として「タンデムマス」の普及により、1回の検査で19種類の疾患予測が出来るようになっています。
デメリットとしては、将来確実に起きる病気なので、出生時に無症状であっても生命保険に加入できない場合があります。当然、子供にとってはメリットの方が大きくなります。
◇先天的な代謝異常の一例
代謝異常とは、脂肪酸の場合肝臓で中性脂肪になりますが、グリコーゲンやATPに代謝することが出来ずに、エネルギー源にもなれず内臓に中性脂肪が溜まってしまうということになります。脂質代謝が行われなくなるとひたすら溜まっていく一方なので当然弊害は出てきます。欠乏症と過剰症が同時に起きるというものです。
ヒトには欠かせない必須アミノ酸や必須脂肪酸や糖などが、代謝されずにそのまま残されると摂取しなかった場合と同じで、欠乏症を起こすだけではなく蓄積していくのも問題になります。
一例として脂肪酸代謝異常症の場合、植物油などの必須脂肪酸は糖分不足の時のエネルギー源なので、空腹時に突然発症することが多くなっています。糖分が不足した場合は脂質代謝が行われないのでエネルギー源を失い、臓器に脂肪が蓄積して乳児突然死症候群の原因になります。
治療法としては、ブドウ糖の補充や中鎖脂肪酸トリグリセリドを腸から吸収させたり、脂質を含む食事を避けて空腹の時間を短くするなどの処置が行われます。事前に見つかった場合は良好な経過をたどっています。
◇代謝異常の疾患リスト
2011年までは6項目でしたが、2012年からタンデムマス導入によって19項目に変更されました。
以下のリストは何のことやらわからない人もいるかと思いますが、困っている人は分かるので一応書いておきます。
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アミノ酸代謝異常症:フェニルケトン尿症・メープルシロップ尿症・ホモシスチン尿症・シトルリン血症1型・アルギニノコハク酸尿症
有機酸代謝異常症:メチルマロン酸血症・プロピオン酸血症・イソ吉草酸血症・メチルクロトニルグリシン尿症・ヒドロキシメチルグリタル酸血症・総合カボキシラーゼ欠損症・グルタル酸血症1型
糖質代謝異常:ガラクトース血症
脂肪酸酸化異常症:MAD欠損症・VLCAD欠損症・三頭酵素欠損症・CPT1欠損症
内分泌疾患:先天性甲状腺機能低下症・先天性副腎過形成症
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(胆道閉鎖症は便の色で判断できるので、カラーシートと比較してください)
◇検査方法と検査対象
全国の産科で全ての出生児を対象に行われます。生後5~7日の間に、足の血液をろ紙に吸い込ませて郵送します。異常が検出されなかった場合は1か月検診の時にお知らせがありますが、異常が見つかった場合は1~2週間後に産婦人科に連絡が入るとのことです。検査費用は分娩費用に含まれて間接的に徴収されます。

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