肺水腫 ~自らの体液で溺れる溺死の一種~

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肺の毛細血管内の血漿成分が、血管外に浸み出して肺胞や気管支に溜まった状態のこと。溜まった水分によって肺の一部で窒息を起こすため呼吸が困難になり、最終的には呼吸不全に陥ります。心臓が原因ですが、肺の中に水が溜まるので一種の溺水のような症状を呈するのが特徴です。

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◇血管性の肺水腫

肺の毛細血管の病的変化があると、血漿成分が血管の外に浸み出す形で肺胞内に溜まっていくことで肺胞がガス交換できなくなる、という事が起こります。このタイプでは血管の質が問題となって浸透圧が関係する症状で、清水型圧性肺水腫、透過性亢進型肺水腫、急性呼吸切迫症候群、または、心臓の機能は関係しないので非心原性肺水腫などと呼ばれます。

この疾患名の付け方ですが、血管の状態を表した呼び方であったり、症状から付けた症候名であったり、原因別の疾患名の付け方やら統一感がありません。急性呼吸切迫型症候群は低体重児に頻発する症状で、血管内皮細胞に損傷を受けているため、治療は困難で予後の悪い難治性の肺水腫です。

血管の病的変化の原因として、血液が感染を起こす敗血症や外傷のあと、重症の肺炎などの原因があります。血液自体が肺に溜まることで同じような症状を起こすことがあります。

◇心臓機能が原因の肺水腫

もう一つの原因として、末梢血管内圧の上昇により水分が血管外に押し出されることで肺の中に水が溜まっていくというもの。心筋梗塞や心臓弁膜症が原因となって血管内圧が上がると考えられています。心臓から肺動脈を通して送り込まれる肺動脈圧が上がる事で、血管壁を通過できる血症や水分、リンパ球の一部が漏れ出してきます。

ほとんどがこのタイプで、心臓が原因で肺水腫が起こります。これは心原性肺水腫と呼ばれて、それほど危険性の高いものではありません。

どちらにしても肺胞に水が溜まります。症状としては仰向けに寝ると息苦しくなるのが通常で、時間を問わず、眠ろうとすると息苦しさで目を覚ます事になります。急性呼吸窮迫症候群の場合は水腫を起こしている肺胞が多いので、呼吸困難や窒息という事態もあり得ます。その前に酸素不足によるチアノーゼや泡飛沫があるので、症状から症候名はわかりそうです。

また、原因不明というケースも多く、原因不明の急性の肺水腫から急性の脳浮腫、または咽頭浮腫を起こして死亡ということもあります。(ハンタウィルス感染の可能性あり、との説もあるようです)

◇肺水腫の診断と治療

診断はX線での画像診断でさっさと済ませます。心原性の場合は、強心剤や利尿剤で肺胞内の水分除去を行い、水腫で炎症を起こしている肺胞に対してステロイドの投与、酸素マスクだけでなく、挿管して強制的に酸素を送り込む人工呼吸を行うこともあります。気道に加圧した状態を保つことが必要です。その後原因となった疾患の治療を行います。

過呼吸を酸素の吸い過ぎと勘違いしている人が多いようです。応急処置を間違えて紙袋をかぶせることが常識、と思い込んでいる人もいますが、二酸化炭素の排出が多い状態で酸素飽和度は正常です。ペーパーバッグで酸素の吸い過ぎを抑えようとすれば急激な酸欠で窒息死します。

肺水腫と過呼吸の症状が似ているので、どちらも紙袋はかぶせないようにしましょう。

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