
女性には前立腺がありませんが、男性の前立腺と同じ機能を持っている器官があります。女性の場合は前立腺炎ではなく、スキーン腺炎やスキーン腺膿胞と言われています。男性の前立腺と同じように膀胱の下に位置して、尿道の周りを取り囲んでいる内分泌系の腺という分泌液を出す器官です。 スポンサードリンク
◇女性の前立腺の役割
女性の前立腺と呼ばれている内分泌系の器官からは、男性と同じように「酸性フォスファターゼ」というリン酸解離酵素を含んだスキーン腺からの分泌物を出しています。性的興奮によって排出が行われるとも言われているだけに、炎症を起こしている時の痛みは相当なものかもしれません。
このリン酸解離酵素が何の役割を果たしているかというと、脂質代謝系でリン脂質が代謝されてリン酸になりますが、リン酸は腎臓の尿細管でリン酸解離酵素によってリン酸がリン1ナトリウムに代謝されて、クレアチニンと供に尿中に排出されます。
そして、尿中のアンモニアを中和して中性のアンモニウム塩として排出されます。というわけで、尿がアルカリ性と勘違いしている人も多いですが、ハチ毒や蟻酸を中和することはありません。
◇男性と同じ女性の前立腺
酸性フォスファターゼというリン酸解離酵素を含んだものは、アルカリ性のアンモニア交じりの尿を中和する過程で使われる酵素でもあるのですが、何やら妙なところから排泄されているようです。尿道から排泄されるのではなく、膣内や尿道の左右の両側にあるスキーン腺から排出されています。
大量に溜まると尿道と膣から放出されることもあります。また、スキーン腺自体が先天的に閉塞している女性もいることから、必ずしも外部に排出する必要はないのかもしれません。尿中に排出すればアンモニアの中和になるので、ヒトによっては尿道から排出されるか、または排出されないということになりそうです。
◇スキーン腺炎の症状と治療
スキーン腺は感染を起こしやすい形状なので、主に淋菌に感染することが多くなっています。そして、淋菌性スキーン腺炎を起こすと外尿道口の周りが炎症を起こして隆起するとともに、尿道の周りまで炎症が及んで腫脹するので、激しい排尿痛が起きます。これが悪化すると化膿して内部から膿が出るようになります。
どうやら、痛み方の症状や分泌(排泄)の仕方は、男性の前立腺とは性質が違うようです。化膿して黄色い膿が染み出している場合は、男性と同じようにニューキノロン系の抗生物質レボフロキサシンを服用すれば数日~1週間程度で治癒します。
バルトリン腺炎が繰り返す場合は開窓術が行われるのと同様に、スキーン腺炎も出口が塞がれて出る物が出ないというヒトであれば開窓術によって治癒するようです。しかし、スキーン腺炎の患者は稀だと言われています。
膀胱の下に位置して尿道を囲んでいる器官なので、痛みだけではなく排尿障害が起きても不思議ではないのですが、特に排尿障害を訴える女性は少ないようです。実際は治療を受ける女性が少ないということで、潜在的な患者数は多いのかもしれません。

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