
旋尾線虫(せんびせんちゅう)とはホタルイカやスルメイカ、ハタハタ、スケトウダラなどの海産物の内臓に寄生して食中毒の原因になっており、過去では北陸地方に限定してホタルイカの生食による感染が多く見られましたが、近年では再び感染者が増加しています。症状は軽いものではなく、腸閉塞などの原因になっています。 スポンサードリンク
◇ホタルイカ解禁後に要注意
ホタルイカ漁が解禁になる3月~8月にかけて毎年感染者が後を絶たないのが現状です。ホタルイカの生食が危険と報道されたため、生産者は加熱冷凍後に出荷することによって1995年には感染者が激減しました。
しかし、近年では日本海沿岸で水揚げされて、冷凍処理されないまま遠隔地に輸送する事が可能になり、踊り食いや内臓付きの刺身などの生食によって感染者が全国的に増加しています。また、内臓を除去しても胴体に残る事があるので、それも感染の原因になっています。
近年になって判明したことでは、成虫はツチクジラの腎臓に生息して産卵するため、ツチクジラの尿から海中に旋尾線虫の卵が散布されます。ツチクジラは日本海と北太平洋に生息しているため、北太平洋ではカニやイカ、スケトウダラ、スルメイカ、ハタハタ・ホッケにも寄生しています。
◇旋尾線虫感染症の症状と治療
皮膚爬行疹型と腸閉塞を起こす急性腹症型の2種類の病型があり、皮膚爬行疹型とは、生食後2週間程度で皮膚に症状が現れて腹部から皮膚に移動した幼虫が真皮を横に移動するので、皮膚の下にみみず腫れのような赤い皮疹が1日に数センチ伸びていくのが特徴で、通過した後に水疱が出来ることがあります。
炎症反応が強いのでステロイドを使う事もありますが、痛みが酷くなければ2か月以内に自然消滅します。皮疹の先端部を切開すると幼虫が見られるので摘出が可能になっています。
急性腹症型では、ゆっくり進行する麻痺性腸閉塞と劇症型腸閉塞の2種類があります。麻痺性腸閉塞では感染部位によって異なりますが、生食後数時間から48時間の間に腹痛と嘔吐があり、症状が2日~10日間持続します。通常は対症療法を行いながら経過観察、または保存療法が行われます。
劇症型腸閉塞の場合は、幼虫が小さいので内視鏡による除去手術は難しく、腸の切除によって摘出手術が行われます。
◇旋尾線虫の感染予防
主にホタルイカに限定して内臓の生食をしないこと。基本的に内臓除去後にも幼虫が発見されることがあるので、冷凍や加熱処理が必要になります。マイナス30℃24時間、または100℃30秒で感染の危険は無くなります。
2000年当時の厚生省は生ホタルイカの販売に際して、下記の内容の通知をしています。
1)マイナス30℃以下で4日間冷凍する。
2)内臓を除去する。(この後凍結が望ましい)
3)内臓を除いてから生食するように表示する。
販売に関する通知であって義務ではないので、近年の生食ブームにより感染者が減らないどころか、逆に増えていると推測されています。保健所への報告義務もないため、実数を把握できていないのが現状です。
この面倒な線虫には特効薬はありませんが、そういえば昔に虫下しの板チョコがありましたね。幼稚園の頃に「これが薬?」と子供心ながら懐疑的になったりしていましたが、懐かしい話です。

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