
近年ではアレルギー体質の急増によって、医薬品(造影剤を含む)に反応する薬物アレルギーが増えています。医薬品の副作用では10%に近い割合でアレルギー反応が出ていますが、その医薬品や造影剤などを避けていると治療や検査に支障が出てきます。その症状と対策とは? スポンサードリンク
◇医薬品と抗原抗体反応
一般的に医薬品は分子量が小さいので、アレルゲン(アレルギーの元になる抗原)にはなりにくいのですが、体内で代謝の過程においてタンパク質が結合することが原因で抗原になります。
また、直接的に抗原になる可能性のある医薬品では、タンパク質より分子量が大きいインスリンなどのホルモンや、ウィルス性疾患に対する抗体医薬品などがあります。抗体医薬品としては新しいものではMERS抗体を初めとして多くの物がありますが、特定の抗体と結合する目的で作られているものの、服用時は体質次第で抗原として作用することがあります。
抗原と抗体は相対的なもので、外部から体内に入ってくるものが抗原で、免疫細胞が抗原を検知してそれに対抗する抗体が作られるという免疫反応があります。外部から抗体医薬品などを体内に取り込む時には、それが抗原になることがあり、免疫反応としての抗原抗体反応によって無毒化されると体内から除去されてしまいます。この抗体反応が過剰になるとアレルギー反応と呼ばれるものになります。
少し分かりやすく書くと、初回の服用時(感作)には皮膚症状などの身体症状は何もなく、2回目の服用時(発作)に症状が出るのがアレルギー反応であり、それが体内に取り込まれる必要のある医薬品であっても異物とみなされて感作が起きると2回目の服用時にアレルギー反応が起きます。初回の服用時にアレルギー反応が起きた場合は即時型アレルギーと呼ばれます。
◇薬物アレルギーの症状と対策
軽い発疹から重篤なアナフィラキシーショックや喉の腫れによる呼吸困難まで、人によって免疫反応は異なります。薬として作用するのが一般的であっても、一部の人に対してはアレルギーの原因になるということで、その場合は主に薬疹と呼ばれるものになります。そしてその薬は基本的に服用できなくなります。
しかし、薬の選択肢が他にない場合や、薬疹が軽いもので薬の効果の方がリスクを上回っている場合は服用を続けることになります。その時の対処法としては抗ヒスタミン剤の服用や脱感作などを行います。
アレルギー反応がある薬を服用するための脱感作の際には、アナフィラキシーに対応できるだけの設備が必要になり、場合によっては人工心肺などの蘇生設備のある場所で薬の服用を行うこともあります。
国内で行われているかどうか不明ですが、アナフィラキシー寸前の状態で薬の投与を続けることで、脱感作を行いながら30分おきに投与量を増やしていくというもので、アレルギー反応が無くなった時点で必要量を投与するということが行われます。
◇画像検査に必要な造影剤
造影剤によるアナフィラキシーは主に小児の場合に多くなっています。過敏症に気付かずに2回目の造影剤の注射時に致命的な事態になることがありますが、事前のアレルギーテストを行わない事が原因になっています。
造影剤の誤投与などという医療事件は一向に減る様子もなく、尿路用の造影剤(ウログラフィン)を脊髄に注入するという単純なミスであり、「造影剤はどれも同じだと思っていた」という医師の陳述もありますが、いずれも執行猶予付きの有罪判決を受けているというもの。医療過誤を防ぐために患者が造影剤の確認をする必要があるということでしょう。
事前の問診票のアレルギーの欄には「なし」にチェックを入れるのではなく、「不明」と書くのが対策になるかもしれません。

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