
最近の生食ブームで感染者が急増している腸管出血性大腸菌は、特に生レバー・ユッケなどからの感染が多く、今年は特に死亡者数が増加しています。主に3種類の病原性大腸菌はベロ毒素を産生する点では共通しています。主に食肉加工工場での感染が原因になり、焼き肉バイキングなどで感染が拡大しています。 スポンサードリンク
◇ O-111の特徴
保育園の給食でO-111が検出されたため、給食が集団感染の原因と判明。調理場と調理従事者からO-111は検出されず、大半の園児と職員が陰性を示していたものの、2回目の検便では1回目に陰性であった者が陽性を示すということが起きています。
ところが、3回目の検便でも同様の事が起きたため、陰性と思われた者からの感染があったということになり、検出できない程度のごく微量の細菌では症状は出ないものの、二次感染を起こすということになります。二次感染防止のためには、徹底した消毒や手洗いなどの防止策を行わない限り、感染者を減らすことは困難であるという結論で、これは家族間であっても同様の措置が必要になります。
◇腸管出血性大腸菌の感染症状
腸に常在している大腸菌のほとんどが無害で、稀に腹痛を起こす程度のものですが、腸管出血性大腸菌は腸で繁殖してベロ毒素を放出します。それを腸管で吸収すると全身に回り、赤血球や血小板を壊すため全身で出血を起こしやすくなるのが特徴です。
皮下出血を起こしても出血が止まらず紫色の内出血が広がります。腸管からも出血を起こして、激しい腹痛や下痢、下血を起こします。神経症状としてけいれんなどを起こし、さらに悪化すると溶血性尿毒症症候群により死亡することがあります。
致死率はフグ毒(5%)やボツリヌス毒素によるものに次いで、腸管出血性大腸炎(3~5%)となっています。
◇腸管出血性大腸菌の予防
通常75℃1分間の加熱で殺菌できますが、わずか100個の細菌数でも感染を起こして、100個から1,000個に増殖すると発症するので、発症菌数と潜伏期間には個人差があります。食肉などは中心部まで十分に加熱したとしても、バイキングでは鉄板の上で接触感染が起こりやすいので、意外と気づきにくい盲点になっています。
特に牛の生レバー・ユッケでの感染が増えています。肉汁が1滴落ちただけでも感染が広がるので、一般的に食肉加工から調理時に問題があると言われています。バイキングなどでトレーに入れてある肉の一つが感染していると、トレー全体に広がるのに時間はかかりません。
体から細菌が検出されなくなる排菌期間では、病原性大腸菌感染症の場合、2日~150日と長期間にわたって保菌している者がいるので、治った後も無菌状態を確認できるまでは、家庭内で感染の危険は無くなりません。
厚労省通知によると、腸管出血性大腸O-26、O-111、O-157の検査法については「VT遺伝子検出法」が使われていましたが、現在ではタカラバイオの「EHEC検査システム」が用いられて、VT遺伝子検査だけでなく、C抗原遺伝子検査を加えた検査になっています。

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