
リステリアという細菌は自然界に広く存在しており、家畜や低温保存の加工食品からヒトが感染するケースが多くなっています。食中毒の症状はインフルエンザに似ていますが、ヒトからヒトへの感染を起こさないのが特徴です。 スポンサードリンク
◇リステリア菌の特徴
一般的な食中毒の原因菌と同じように高温加熱で殺菌できますが、0℃以上で繁殖するので、冷蔵庫で保存できる加工食品に感染の危険があります。特に、乳加工製品・食肉加工食品・魚介類加工食品など、冷蔵庫で保存可能で生食ができる加工食品に危険性が増えます。土中の野菜にも感染するのでサラダなどの野菜の生食にも危険があります。
「冷蔵庫で保存していれば、消費期限を多少超えても大丈夫」という人間心理の裏をついた細菌で、要冷蔵と表示されている加工食品を生食すると稀に感染症を起こします。加工工場の生産ラインに付着して繁殖している場合も多く、人の目が行き届かないところで繁殖と感染を続けることもあると言われています。
通常、健康な成人であれば感染しても滅多に発病しません。小児や高齢者の危険性が多いですが、最も多いのが免疫機能の低下している妊婦や高齢者、免疫抑制剤を使用している患者などは、10個~100個程度の細菌数でも感染します。感染するリステリア菌の数は免疫力の低さに比例して、少ない菌数で感染します。
◇リステリア食中毒の症状
免疫力によって発病する細菌数が異なるので、潜伏期間の違いも個人差が大きく、感染の24時間後~2週間後に発病して、悪寒や高熱、倦怠感、筋肉痛など、インフルエンザに似た症状を示します。
潜伏期間以上経過しても発病しないのであれば、症状が出ないまま(無症候)で経過していますが、2~6週間経過した後に発病すると、髄膜炎や敗血症などの重篤な全身症状が現れて致死率が高くなります。
同じものを食べても、免疫力次第で症状が出る者と出ない者に分かれて、さらに潜伏期間の違いで発症する時期も異なることで、食中毒を疑う者がいないというのも特徴です。
嘔吐や下痢などの胃腸症状がなくインフルエンザに似た症状で、発症時期が異なることで、症状が出ない者もいるという事から、風邪やインフルエンザと疑われて食中毒の原因が特定できないのもリステリア菌に共通した性質です。
また、無症候で経過して感染が無くなるのが大半なので、リステリア菌感染者の実数は把握できていません。感染経路や感染源さえほとんどが不明と言われています。
◇感染と食中毒の悪化に注意
リステリア菌による食中毒と判明するのは、妊婦の定期検診や、重症化して医療機関を受診した時に、病巣の生検を行って、菌の分離・培養により菌種が特定されます。
生検を行うのは、細菌性髄膜炎・敗血症(リステリア症)や、中枢神経の症状やを起こしている時など、何らかの細菌感染が疑われる時に有効菌種の広い抗生物質を投与しながら行われます。そのためリステリア菌に感染していると判明するケースが少なくなっています。
大量のリステリン菌に感染した場合は同時期に症状が出やすいので、集団感染という形で細菌感染が判明します。小児や老人は少ない菌数でインフルエンザのような症状の後に重篤化することがあります。
◇妊婦の流産とリスク管理
ヒトの間で感染が広がることは稀ですが、妊婦の場合は感染しやすい状態になっているうえに、胎盤を通して胎児に感染を起こしやすく、流産の危険性が高い事が問題になっています。
妊婦は免疫力の低下だけでなく、調理の際に非加熱食品・加工食品・野菜などに触れる事が多く、更に感染しやすくなっているので特に要注意です。

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