
脂肪細胞の中の脂質が減少することは「痩せる」と言いますが、脂肪細胞そのものが無くなってしまう病気が脂肪萎縮症です。脂肪を蓄える場所を失った結果、合併症として糖尿病や脂肪肝、脂質異常症(中性脂肪値の増加)などを発症します。 スポンサードリンク
◇ 脂肪萎縮症の概要
脂肪萎縮症を発症すると外見上は痩せたように感じますが、脂肪組織自体の減少や消失が起こる代謝異常が原因の病気です。脂質代謝の異常から始まり、血液中に脂質が溶け込んで脂質異常症や脂肪肝を招くという難病指定の疾患です。
進行していくと四肢などの脂肪細胞がほとんど無くなります。HIVに感染した患者と似たような症状を示し、自己免疫疾患や感染症に罹っている患者が多いため、合併症を発症すると治療が難しくなります。
しかし、HIVとの関連が示唆されているのが原因かどうか不明ですが、実際の患者数や経過については国内では把握されていないのが現状で、糖尿病や自己免疫性疾患など合併症の対症療法が行われてきました。
◇ 脂質萎縮症の原因
はっきりとした発症の機序は不明ですが、後天性の場合はHIVの感染と治療薬が原因になり脂肪萎縮症が発症するとも言われています。遺伝子の欠陥や免疫異常が影響して、主に中性脂肪の代謝異常やインスリン抵抗性などが起きると考えられています。
国内では発症している患者が少ないので、HIV感染症や治療薬との関連ははっきりしませんが、欧米ではHIV感染に次いで脂肪萎縮症の合併症が起きたり、HIVの治療薬が原因となる患者が増加していることが判明しています。
全体的なメカニズムは不明ですが、直接的な原因としては、脂肪細胞を然るべき組織に蓄積する機能が欠如していることから、脂肪細胞から分泌されるホルモンの不足や自己免疫疾患、医薬品などが影響していると考えられています。
◇ 脂肪萎縮症の症状
脂肪萎縮症とは遺伝性異常による先天性のものが大半を占めており、後天性の場合、自己免疫性疾患や脂質代謝の治療薬との合併症として糖尿病や脂肪肝、脂質異常症などが発症することが分かっています。
原因や発症のメカニズムは不明でありながら、直接的な原因として脂肪細胞が消失してしまうことから、脂肪組織の代謝に関わるホルモンでもある「レプチン」が不足することによって症状が表れることが判明しています。
脂肪の萎縮は全身性と部分性に分かれて、先天性で全身性の場合は、生後から10歳頃までの間に脂肪消失と肝臓の腫大が見られます。
そして、10歳を過ぎた頃に定期検診の数値上、糖尿病との合併症が顕著になると、代謝系の異常によるカロリー消費が低下します。それによりインスリン抵抗性(インスリンの効果が低下)が起きると、更なる糖尿病の悪化と急性膵炎、脂肪肝から肝硬変の進行が起こります。
レプチンが医薬品として承認された2013年以降は、脂肪萎縮症の患者の寿命を現状の30~40年よりさらに延ばすことが可能になったと言われています。
◇ 脂肪萎縮症と合併症の治療
近年になって、脂肪細胞から分泌されるホルモンとしてレプチンの作用が解明され、治療効果が認められた結果、保険適応の治療薬として投薬が行われています。しかし、脂肪細胞が減少、または消失していればレプチンの分泌が行われません。
現在のところ、レプチンの補充に加えて脂質や糖分の摂取を控えるという治療法が一般的になっていますが、無くなった脂肪細胞は元に戻らないので根本的な治療法ではありませんが、症状の進行を抑えることは可能になっています。
糖尿病や脂質異常症の患者に対しては、生活習慣病と同じように運動をしながら脂質代謝を行っていくことも有効で、レプチンと併用することが望ましいとされています。

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