ヨウ素の過剰摂取と甲状腺機能低下症

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海に囲まれた日本では、ヨウ素の摂取量は食事から十分な量が取られています。ヨウ素欠乏症は考えにくい日本人が、治療薬やうがい液などからヨウ素を摂ることによって過剰症を引き起こす場合があります。ヨウ素の欠乏だけではなく、過剰に摂り過ぎた場合でも甲状腺ホルモンが減少して甲状腺機能低下症を起こす可能性があります。

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◇ ヨウ素欠乏症による甲状腺機能低下

甲状腺ホルモンはヨウ素の摂取によって作られ、神経細胞・末梢組織・酵素反応・代謝に関わるホルモン(神経伝達物質)です。ヨウ素が欠乏すると甲状腺の肥大化により、子供の場合は成長や脳の発達の遅れや、代謝の低下が原因となる全身性の症状が出ます。

妊婦の場合は胎児の成長遅滞や脳の発達に影響が出るため、流産の原因になります。新生児では先天的な代謝異常や甲状腺機能の低下により、精神遅滞・視聴覚異常など発達障害が現れる可能性があります。この症状は妊婦のアルコール摂取や喫煙、母体の感染症による影響にも似ています。

甲状腺ホルモンの血中濃度次第では、生涯にわたってヨウ素または甲状腺ホルモンの投与が必要になる可能性もあります。

しかし、日本では海水や土壌中などの環境中にヨウ素が含まれているため、植物や海産物の食事で十分な必要量を摂取しています。ヨウ素欠乏症はほとんど起きず過剰症だけが問題になっています。

◇ ヨウ素による甲状腺機能障害

ヨウ素が過剰に取り込まれる原因では、単にヨウ素を多く含む昆布などの海藻の摂り過ぎ、うがい薬のポビドンヨードの過剰使用、X線検査の際にヨウ素のアイソトープ(同位体)を一時的に大量に使う事があります。

他には、PET-CT・SPECT・手軽なCTやバリウム検査など、レントゲンの検査機器が出すX線では甲状腺にあるヨウ素によって被爆します。放射線治療の際にも被爆するため、影響を受けないように安定化ヨウ素の口中投与が行われます。最も影響が大きいのが放射線治療による被爆で、長い場合は数十年間にわたって甲状腺機能が低下します。

また、ヨウ素欠乏症の場合に治療薬としてヨウ素を補充する事になりますが、定期的な検査を怠ると長期的な補充により過剰症になることもあります。

◇ ヨウ素を過剰に摂取した場合

過去から多くのヨウ素を摂取してきた日本人の場合、ヨウ素過剰の影響は少なく甲状腺に与える影響は少ないものです。

通常、血中に含まれるヨウ素の必要量は1日当たり0.0095mg~0.15mgですが、成人の1日の平均摂取量は0.5mg~30mgとも言われています。1食分5gの乾燥昆布中に12mg~のヨウ素が含まれているので、それだけで上限を超えます。

昆布をダシに使う事が多いので、昆布味の調味料(しょうゆ・めんつゆ等)でさえ危険ということになります。ヤマサの昆布つゆなども長期的に考えると油断はできません。健康な人であれば過剰に摂取した分は排泄されるので心配は要りませんが、長期的に摂取すると健康を害する可能性があります。

健康な人や甲状腺に異常のない人は、ヨウ素を摂り過ぎても甲状腺機能が低下、または亢進する事はなく、過剰なヨウ素が甲状腺の機能をセーブさせて結果的に排出されるので、甲状腺ホルモンが増加するとは限りません。もし甲状腺機能が亢進した場合、通常はヨウ素を摂らなければ治ります。

 

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