
2016年の山菜取りのシーズンでは、毒草を食べて中毒症状を起こす者が急増。去年の患者数を超える中毒者数で、間違えやすい危険な毒草としてイヌサフランやスイセンなどがありますが、スイセンをニラと間違えて販売されたものを購入者が食べて食中毒を起こすなど意外な植物による中毒患者が増えているので、ご注意を。
◇ 食用のギョウジャニンニクとは?
ギョウジャニンニク(ネギ科)
このギョウジャニンニク(写真)はネギ科の多年草。葉や茎が食用として知られており、山菜の中でも調理法が多くポピュラーなもので、「行者にんにく」としてしょうゆ漬けにした土産物もある食材です。
ニンニクに似た臭いで、滋養強壮に効果があるという植物ですが、これに似ている強毒の毒草が多く、2016年に入り宮城県だけで109人の中毒者が出ています。宮城県では間違えて栽培して食べた70歳の男性が多臓器不全を起こして死亡。家族は味に違和感があったため食べなかったといいます。
◇ ギョウジャニンニクと間違えられる毒草
イヌサフラン(ユリ科)
ギョウジャニンニクと間違えやすい野草ではイヌサフランがあり、毒性は強く1株中に4人分の致死量に相当します。アルカロイドのコルヒチンを含むため痛風に対する消炎作用があり、医薬品としても用いられています。過剰に服用すると貧血、嘔吐、下痢、腎不全などを起こして、最悪の場合は呼吸困難を起こして死亡します。ニンニク臭がないので、においを嗅ぐと違いが判断できます。
バイケイソウ (ユリ科)
食用のギョウジャニンニクやウルイと間違われやすいバイケイソウ。数種類のアルカロイドを含み、降圧剤などの漢方薬として使われていますが、血管拡張作用によって貧血や意識障害を起こしやすいものです。軽症例では嘔吐を起こします。ユリ科やラン科の植物は一般的に薬効があるものの、過剰に摂取すると生命の危険があるものが多くなっています。
◇ ニラと混同されやすいスイセン
ニラとスイセンは明らかに臭いの違いがありますが、地元の農家でも間違えて販売することがあるというほど形は似ています。スイセンの毒性は強く、食べた30分後に症状が現れて、吐き気、嘔吐、頭痛、下痢、発汗、意識障害などが起こります。スイセンはユリ科の球根植物で、葉にはニラのような臭いはないので区別できます。
スイセン(ヒガンバナ科)の球根はタマネギと勘違いするようで、小学校の調理実習で味噌汁に入れたところ、それを食べた12人中5人に吐き気や嘔吐の症状が出たとのこと。明らかに味が違うので違和感があると思いますが、学校の菜園で栽培していたとすれば、タマネギを植えた自覚がないというのも不思議です。
花が咲いていないときにニラと勘違いする事が多く、球根もタマネギに似ていますが、臭いで判断できます。スイセンの場合は球根から葉に至るまでアルカロイドを含み、脳血管障害やアルツハイマーに使われるガランタミンに薬効があり、有毒物質としてはリコリンやシュウ酸カルシウムを含んでいます。
◇ トリカブトと区別のつかないニリンソウ
トリカブトとニリンソウ
トリカブトとニリンソウが自生していますが、全く見分けがつきません。トリカブトの猛毒のリスクを犯してまで、なぜニリンソウを食べる必要があるのかと思えば、アイヌは60種類以上の植物を食料にしていましたが、その一つがニリンソウとのこと。
トリカブトの毒成分はテルペン系アルカロイドの「アコチニン」。強心剤などの生薬として使われることもありますが、致死量が微量で1.5mg/kgを超えれば呼吸抑制や致死的な心室細動を起こす可能性があるので、吐かせた後は延々と心肺蘇生を行う必要があります。AEDを使ったところで、体内に毒が残っている限り心停止は続きます。
最初の嘔吐に次いで、痺れや手足の麻痺が起きると後遺症が残ります。嘔吐がある時点で出来るだけ胃の内容物を出させると症状が軽く済む場合があります。

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