糖尿病患者の脳梗塞の不安とSCUの恩恵

byouin2

糖尿病に罹った軽症(または初期)の患者が最も心配する症状が「脳梗塞」です。糖尿病腎症の合併症があったとしても、透析に至るまでは血糖コントロールで何とか避ける事が可能だという油断もあり、透析は10年単位の将来に必要になるかもしれないという認識がほとんどです。糖尿病では間近に起こるかもしれない脳梗塞が深刻な問題になっています。

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◇ 通常の脳梗塞の予兆と原因

脳梗塞の原因とは、生活習慣病や内臓脂肪の多い肥満体質、高血圧症の高齢者などが代表的なものです。高血圧や生活習慣病の影響が蓄積したとしても、脳梗塞の前兆らしきものを感じ取ることや、血液の質や動脈の状態を数値的に表す事は可能であり、アスピリンによる予防手段も簡単なので、それほど危機感は感じないのかもしれません。

動脈にアテローム性のプラークが形成されると、血栓が飛んで瞬時に脳梗塞を起こします。その飛んで行った先に出来る血栓が塞栓性脳梗塞というものです。日本人にはアテローム性動脈硬化は少ないタイプであり、脳の細い血管が次第に閉塞を起こすラクナ塞栓が多くなっています。

初期症状として、体の一部が軽い麻痺を起こす、力が入りにくくなる、モノを思い出しにくくなる想起力の低下や記銘力の低下などの自覚症状が一般的です。この様な脳虚血を原因とする症状は脳梗塞の前兆とも言えますが、一過性のものでそれほど長く続きません。この時点で脳神経外科を受診すれば、最近の血栓溶解剤には即効性があるので、予防を含めた処置が可能になります。

◇ 糖尿病が原因の脳梗塞の場合

糖尿病が原因になる脳梗塞は、男性では塞栓性脳梗塞のタイプが最も多く、心臓のアテローム性動脈硬化に出来た血栓が飛んで脳血管に詰まることが多く、女性はアテローム性脳梗塞が多くなっています。(日本人全体で最も多いものはラクナ脳梗塞なので、糖尿病患者では傾向が異なります。)

糖尿病の場合は、ブドウ糖が血管の内皮細胞にダメージを与えて、さらに炎症の原因になる免疫細胞のマクロファージやサイトカインが血管壁を刺激します。その結果、炎症が起きやすく免疫力の低下を招きます。肥満体質の中でも内臓の脂肪細胞が脂肪を溜め込むと、この炎症反応が起きやすくなります。

インスリン抵抗性が高く高血糖になりやすい肥満体質の場合に特に危険性が高くなりますが、糖尿病と判定されない境界型でも脳梗塞の危険があるという点では、少し血糖値が高く治療の必要がない場合でも脳梗塞を起こしやすいということになります。

健康な人の場合でも、少しの油断で「ペットボトル症候群」という一時的な高血糖になる症状があります。糖分を何グラム含んでいるかわからないままスポーツドリンクを大量に飲んでしまうと、脳梗塞の危険が出てきます。人間に必要な糖分が思わぬ事態を招くというわけで、高血糖が血管に与える影響は大きいものと考える方がいいでしょう。

[ 糖尿病と病型別脳梗塞の発症リスク ]
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出典:多目的コホート研究

◇ 脳梗塞の救急治療のいま

脳出血と脳梗塞、クモ膜下出血を合わせた脳卒中の死亡者は年間10万人以上であり、患者数はその10倍とも言われています。その中の脳梗塞では、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症がありますが、近年では脳卒中ケアユニット(SCU:Stroke Care Unit)での急性期医療が確立しつつあるため、入院患者の死亡率が減少しています。
脳梗塞の急性症状が起きると、SCUを設置している医療機関へできるだけ早く救急搬送を行う事が必要になります。従来の治療法とは異なる血栓溶解剤のアルテプラーゼ製剤を用いた(t-PA静注療法)の治療開始までに、脳梗塞の発作から4時間半以内であれば不完全虚血状態(血栓により血流が無くなった直後)の脳血流改善が期待できるため、脳細胞のダメージを無くすことが可能です。(カテーテルを使用する場合は8時間以内まで治療可能)

アルテプラーゼ製剤を用いた治療は日本では2005年から可能になり、現在では最も有効な治療法になっています。従来の治療法と比較すると、40%の確率で後遺症を残さず、無症状になるまで回復させることが可能になっています。

国内での致死率は従来の治療法と比較して半数程度の約10%に減少したものの、不運にも高度障害を残したまま生存する確率が増えているのは、別の意味で問題かもしれません。

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