難病指定から外れた「正常圧水頭症」 | 家庭医学の知識大百科「ヘルスカレッジ」~家族を大病から守るためのサイト~

難病指定から外れた「正常圧水頭症」

正常圧水頭症(NPH)は水頭症と違い、脳圧が上がらない事で諸症状が出にくいため、原因不明の疾患の中でも治療は簡単な方です。三大症状として、歩行困難、痴呆症、尿失禁がありますが、ドレーンにより腹腔内に流すという治療が有効であるという理由で難病指定から外れています。

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◇ 頭蓋内圧に変化のない正常圧水頭症

正常圧水頭症の正常圧とは、脳や脊髄を覆っている脳脊髄液の圧力が正常ではあるものの、脳室の圧力が上がってクモ膜下の圧力が下がることで、全体的には頭蓋内圧は正常であるということを意味しています。

脳脊髄液は無色透明の液体で、くも膜と脳実質の間と脳室を満たして、クッションとして働いています。脊髄の周りを満たしているものと合わせて脳脊髄液といいます。脊髄とは、延髄から仙骨にかけて伸びていますが、その脊髄腔の中を通る神経のクッションとして脊髄腔を満たしている液体の事です。

この説明で専門用語がいくつか出てきましたが、意味がわからないという方も多いと思いますので、以下に簡単な説明を書いています。

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(Wikipediaより)

・脳脊髄液(のうせきずいえき):脳と腰部の下の脊髄の緩衝液。
・脊髄腔(せきずいくう):脊椎の中を通る脊髄が収まる空間。
・脊髄(せきずい):全身の神経の束。尾骨から延髄まで。
・脊椎(せきつい):脊髄・脊髄腔を保護する骨。軟骨と骨。
・延髄(えんずい):脊髄の上部の末端、脳幹につながる。
・脳幹(のうかん):延髄と橋、中脳・間脳を含む脳のCPU。
・脳室(のうしつ):脳脊髄液を産生。拡張すると水頭症。
・脳漿(のうしょう):脳全体を満たしている脳脊髄液。

脳の中間より少し上の延髄の周りと、脳室で作られて頭蓋内を満たしている脳脊髄液の循環障害により吸収がうまく行われないと、頭蓋骨に近い方の脳脊髄液が減り、脳室内に溜まるようになります。頭蓋内圧が変わらないとしても、水頭症の症状を持つ疾患として定義されています。

◇ 唯一の治る認知症といわれる症状

一般的な水頭症では頭蓋内圧が高くなり、時間をかけて脳や頭蓋骨の大きさも肥大しますが、正常圧の場合は外見上の変化を見せず、頭痛も起こりません。正常圧水頭症特有の徐々に表れる症状としては、痴呆症、歩行障害、尿失禁の3大症状が特徴的なものです。しかし、全体の脳圧は変わらないとしても部分的に圧迫を受けているため、脳室の脳脊髄液を排出させるだけで認知症などの症状が出なくなります。

この、正常圧水頭症の場合、「唯一治る認知症」と言われています。現在ではアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症ではコリンエステラーゼ阻害剤(アリセプト)が保険適応であり、悪化防止や治療効果があるというほど認知症は治療薬で治る時代になってきました。認知症の発病予測も可能で、その時点で予防治療を行えば発症を未然に防ぐことができます。

◇ 高次脳機能障害の診断と治療

高齢者の男性に多く脳漿が溜まって起こる疾患です。痴呆症・歩行障害・尿失禁の正常圧水頭症の三大症状を呈します。通常は脳脊髄液の循環不全によって脳に溜まると、頭部が肥大して「水頭症」が起こりますが、「正常圧水頭症」の原因は不明のままです。

原因は不明でも、CTスキャンやMRIなどの画像検査では脳室の拡大が見られるため診断は容易です。処置も簡単で、シリコンチューブを使い、脳室内に溜まっている脳脊髄液を抜くと正常圧水頭症の症状は無くなります。これはタップテストというもので、脳脊髄液を抜いた時の症状消失があれば確定診断が行われます。

原因不明の難病に指定されていましたが、治療が簡単なため難病指定から外れています。脳室から脳脊髄液を腹腔内に流すことで(V-Pシャント術)症状が改善されます。現在では腰椎から脳脊髄液を腹部の腹膜内に流すこと(LーPシャント術)が行われて日常生活に影響が及ばない程度に回復させることが可能です。

もし、脳脊髄液を抜いても症状が無くならない場合は原因不明のまま治療法も確立されていません。頭蓋内圧力を減少させても効果が見られない場合は髄液マーカーが使われて「特発性正常圧水頭症」の診断に変わることがあります。この場合は「難病性疾患」として難病認定を視野に入れた研究が行われています。

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