インフォームド・コンセントと自己決定権

byouin2

この場合の「自己決定権」とは医療上の権利です。幸福追求権が元になり、自分の生き方は自分で決めるというもの。医師から説明を受けた上で治療法を患者が決めるという意味で、医師が考えられる範囲の全ての説明を受ける権利が前提にあります。

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過去のインフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントは、「十分な説明と合意」などと言われてきました。例えば、手術の前に考えられるメリット・デメリットの説明を受けた後に患者が納得して同意書にサインをする、といった性質のものとは全く異なります。

医療とは「治癒に向けた医療行為を行う」という診療契約なので、医師は一般的に行われている手術が妥当と考え、手術に対する十分な説明をして患者の同意を得たとします。

そして手術が成功して治療上は最もいい結果が得られたとしても、もし手術以外の選択肢があった場合に他の選択肢を患者に説明していないとすれば、医師は説明義務違反に問われる可能性があります。

このケースでは契約上の問題がないので契約不履行には当たりませんが、手術の説明を行い納得させただけに過ぎず、インフォームド(説明義務)は十分ではなく、コンセント(患者の自己決定権)を行使する余地を与えていないということになります。

アメリカと日本の医療と個人主義の違い

医師の処置や手術で病気そのものが良くなったとしても、生活の質に影響が出るなど、患者が予期していなかった状態になれば医療過誤に該当します。

これは、アメリカでの患者の人権問題に端を発しており、のちのインフォームド・コンセントの元になっています。十分になされた説明に対して医療に不満を持ち、患者が医療訴訟を起こすようになったという背景もあります。

アメリカでの医療訴訟は1960年代から増え続けていますが、個人主義と患者の医療に対する知識の向上があり、自己決定権の侵害を訴えることが増えています。医療先進国のアメリカでは「患者の自己決定法」が法制化されて、医療機関が患者に対して権利の保護を行っています。

それに対して、日本ではいまだに医療訴訟の件数は少なく、医療訴訟を担当できる弁護士や裁判官が少ないという理由もありますが、特に医療の方面では個人主義の徹底が行われないままであり、医師がガン宣告を行う相手が患者本人ではなく、親族に告知したあげく「本人に話すべきかどうか」と親族が悩むというパターンは相変わらず多いように思えます。

場合によっては、患者の知る権利や自己決定権を無視して進めていくのが日本の医療でもあり、自己決定権ではなく医療ミスがあった場合に親族が訴訟を起こすというのが一般的です。患者本人にがんの告知をしても許容範囲かどうか?という医師の気遣いも影響するため感情論で済ませることも多く、個人主義には程遠いのが日本の医療です。

患者本人に対する説明義務の徹底

医療過誤の場合は患者側が証明する義務があるので、現実的には説明義務違反による慰謝料請求事件の扱いになり、医師や看護師を含めた医療機関が選択肢を含めた全ての説明を行ったことを証明する義務があります。

患者がその治療方法を選択したという自主性の有無が問われているわけで、十分な説明と患者にある程度の選択肢を与えるという意味では、患者の主体性が存在して誰にも不満の残らない医療が行われるべきです。

しかし、平成28年改定の医療法では…

「第一条の四の2 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」。

「適切な説明と患者の理解を得るように」と書かれていますが、患者に意思決定の選択肢を与えるために、医師が考える治療と目的、予想される危険、使用する麻酔薬の副作用、可能な代替療法、術後または治療後の生活の質など、重要視すべき点を伝える義務がある。とは書かれていません。

これは自己決定権が関係していることもあり、判例では上記の全ての説明をしない限り、説明義務違反や人格権の侵害に問われています。

医療法や医師法ではそれほど詳しい説明が必要という印象はありませんが、患者側が権利を振りかざした結果、医師が治療に対して慎重になると本来の積極的な治療を受ける事が出来なくなる可能性があります。

麻酔薬の副作用は同意書で説明していますが、麻酔薬の種類によっては覚醒前に卑猥な幻覚を覚えるため、胸部外科医が検診の時に痴漢扱いの被害に遭ったりするわけです。乳がんの切除術では場合によって乳房を温存することも選択可能なケースもありますが、それを術後に知った患者が説明義務違反による損害賠償請求訴訟で勝訴しています。

自己決定権と医療法の説明義務の関係

そもそも日本のインフォームド・コンセントとは、医療機関が医療過誤の訴訟を減らすために、医師のリスク回避を兼ねて医師と患者感の信頼度を上げるための手段として患者への説明義務ガイドラインを設けたものです。

患者の側の権利としては憲法13条で定められている幸福追求権の一つでもある自己決定権があり、さらに詳細にわたって説明する義務が生じてきました。

しかし、がん治療の多様性について説明義務があるとすれば、延々と説明をしなければならず、選択肢が広がり過ぎた上で「どれにしますか?」と判断を迫られても、保険適応内の治療にするか、自費で高価な先進医療を選択するか?という問題もあり、患者は決断に困るという状況に陥ります。

というわけで、告知を受けないというのも自己決定権の行使であり、医師に全てを任せるという選択も自己決定権に含まれます。

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