
悪性リンパ腫が末期になると通常治療で治ることはありません。余命3ヶ月の悪性リンパ腫がなぜ治ったのか?という理由に触れている記事やニュースは不思議な事にほとんど見かけません。リンパ腫に良性はなく、全てが悪性で予後の悪い血液のがんですが、完治に至った理由とは? スポンサードリンク
目次
悪性リンパ腫発病、ステージⅣの症状と経過
女優の大谷直子(当時57才)は、2007年に背中の激痛を感じ、検査を受けたところ脊椎圧迫骨折が判明。同時に悪性リンパ腫が見つかる。脊椎圧迫骨折は腫瘍の骨転移が主な原因で、臓器や脊椎は腫瘍に圧迫されていた。
治療効果が期待できないステージⅣとわかり、医師は家族に対して余命3ヶ月を宣告。本人は家族から聞いて自分の余命を知ることになります。
悪性リンパ腫は手術ができる性質の病気ではなく、抗がん剤を使用しない場合は疼痛緩和に徹したり、症状を抑えて楽に生きられる終末期医療が行われます。
余命3ヶ月宣告後の抗がん剤治療
「死因は悪性リンパ腫、あと3カ月で死ぬのか・・・と欲を捨てて自然にしていたら、抗がん剤が効いてくれた。」
一般的に医師が余命3ヶ月を宣告した場合に積極的な治療はしません。治癒に向けた診療契約自体が終了したようなもので、生活の質を下げないための疼痛緩和を主とした処置が行われます。
しかし、「死期が早くなってもいいから、わずかでも治る見込みがあれば抗がん剤を使ってほしい」と患者が頼むことがあります。この場合は医師として、リスクを覚悟で認可が下りていない新薬を試すことがあります。
途中経過は必ずしも正確とは限りませんが、Wikipediaによると「抗体薬を使用して半年後に治療を終えた」と書かれているので、2007年当時の抗体療法では免疫チェックポイント阻害剤のイピリムマブしかありません。
「半年後に治療を終えた」「抗体薬の点滴治療」ということから、半年間の服薬でも数年にわたって効果がある免疫チェックポイント阻害剤を数種類併用して点滴治療を行ったと思われます。
抗がん剤治療が継続できた理由
「副作用の頭痛も何も出なかった。手足に軽いしびれがあったが、数種類の抗がん剤治療には十分耐えられた。」
医師が勧めた抗がん剤治療の副作用が軽く苦痛が少なかったことが幸いして良い結果をもたらしたともいえます。明らかな改善効果が見られたことで継続することになりました。
余命3ヶ月を宣告した医師は、抗がん剤に「免疫チェックポイント阻害剤」を使う事を提案、使用した薬は2007年にちょうどイピリムマブの悪性黒色腫に対する最初の臨床試験結果が出たところなので、それを含めた複数の免疫療法を行ったようです。
手足のしびれは免疫チェックポイント阻害剤の副作用の中でも静脈血栓塞栓症が原因の軽いものです。最も考えられる副作用としては、免疫系が過剰に作用する事で自己免疫疾患の危険があります。
厚労省は2014年まで販売承認をしていないので、当時は自由診療の対象で公的医療保険が使えません。現在でも悪性リンパ腫に対しては自由診療扱いです。
金銭的に余裕があれば
悪性リンパ腫の標準治療の場合、免疫療法ではない抗がん剤の投与が行われ、X線を使った定位放射線治療を併用するのが一般的です。
2007年当時の免疫チェックポイント阻害剤は自費で点滴1回分が133万円、年間3,500万円以上に及ぶ医療費(2017年は1,500万円に値下げ)ですが、本人は新しい抗がん剤と説明を受けただけで、複数の抗体医薬品による化学療法を受けています。
「1か月間の入院後は通院治療を行い、3週間おきに7回の抗がん剤治療を受けると、効き過ぎるくらいに効いた。」
抗がん剤というと副作用が強いイメージがあるので、違う呼称を使うことがあります。がん細胞が免疫系を無効にするため、それを阻害して免疫系に作用する「抗体医薬品」であり「免疫療法」です。抗がん作用のある化学療法の一つなので、患者に対してはそういう説明になるのかもしれません。
新しい医薬品の免疫チェックポイント阻害剤の呼称は統一されていません。「新しい抗がん剤」でも通用しますが、「モノクローナル抗体」、「抗PD-1抗体・抗CTL-4抗体」、「分子標的薬」、「抗体医薬品」とも呼ばれることがあります。
先進医療の効果を、身をもって実証した
「強い薬だったので、体の中から”毒素”が抜けるには3年ほどかかったが、死んでもいいとさえ思っていた私は無事に生還。何てついているのだろうと自分の持っている運に驚いた。」
ちょうど「新しい抗がん剤」が開発されたところに悪性リンパ腫が見つかったという意味では、運が関係しているかもしれません。
抗体医薬品には「抗CTL-4抗体(イピリムマブ)」、「抗PD-1抗体(ニボルマブ)」などがありますが、これを併用すると副作用が抑えられて、強力な抗がん作用が得られます。この組み合わせの抗がん治療が最良と考えられて現在の主流になっています。
ちなみに複数の未承認薬を使うと、上記の組み合わせでは2007年当時の医療費は単純計算で年間7,000万円に及びます。症状や体重に合わせて用量を増減することは可能ですが、余命3ヶ月の末期がん患者の場合、複数の抗体薬を3年間続けたとすればかなりの金額になります。
長期間効果が持続する薬なので、半年で中止したのか1年間継続したのか、または他の治療法を3年間続けたのか明らかではありません。
ネット上では大谷直子死亡説や、余命3ヶ月でなぜ治った?とささやかれていましたが、再発の危険性があるとはいえ、今では完治して女優活動を再開しています。
医師の説明責任は果たされたのか?
複数の免疫チェックポイント阻害剤の服用により、過剰な免疫反応を抑えることが明らかであり、副作用が抑えられて作用が増強されるという結果も出ています。副作用が出た時点でステロイドを投与すれば対処できるため「強い薬」というわけではありません。
余命の宣告を本人にしなかっただけでなく、投与する薬の説明もされていないようです。「治ればいい」という結果論は医療の本筋から逸れています。いつまで経っても患者の意思が反映されにくくインフォームド・コンセント軽視の日本の医療という印象は消えません。

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