新薬の先駆け審査、薬価、コンパッショネート・ユースとは?

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新薬が開発されると販売・処方を前提とした治験が行われます。その後PDMA(医薬品医療機器総合機構)の審査を経て、厚労省が薬として販売、処方してもよいという認可の後に薬価が決められます。しかし、審査に数年の期間を要することから、例外的に未承認薬の処方が行われることがあります。

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治療効果のある新薬を使えない患者

一例として治癒率100%近くに及ぶC型肝炎治療薬や、どの種類のがんにも効果がある免疫チェックポイント阻害剤、その他の遺伝子治療・粒子線治療などを含めた先進医療を誰でも利用できるようになれば、C型肝炎や全てのがん患者の生存率が上がり、治癒も期待できます。

※ 保険適用のC型肝炎の治療薬ソバルディーとハーボニーを併用した場合の治癒率100%というのは、事前検査で薬の効果があると判定された患者が服用できるため、そのような確率になっています。

しかし治療効果が明らかな新薬でも、薬価が決まるまでに7~14年の期間を要することが問題になり、恩恵を受けられない患者は病気が進行していき、認可前に死亡する患者も多く見かけます。

オプジーボは悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として開発されましたが、現在では全てのがんに効果があることが分かっています。しかし対象疾患は限定されているという矛盾は、薬価の異常な高さと薬価見直しが2年おきであることなどが原因になっています。

また、全身の筋力を失い最終的に脳しか働かなくなるALS(筋委縮側索硬化症)は進行が早く、生存期間の平均(罹病期間平均値)は2~3年です。発病すれば、骨髄性白血病の治療薬ボスチニブが有効であることが判明していますが、すでに白血病に対する治験が終わっている薬でも、ALSの患者が服用できるまでに長い年月が必要になるというのが現状です。

非臨床試験から新薬承認に至るまで

製薬会社で行われる薬効薬理試験、安全性・毒性試験はマウスを用いた非臨床試験を行います。非臨床試験で問題がなければ、実際に対象疾患を持つ患者で臨床試験(治験)が行われて、新薬開発は一歩進みます。

医療機関での第1相~第3相までの臨床試験(治験)に次いで厚生労働省に承認申請を行い、薬価基準が決まると公的医療保険が使える医薬品として販売されます。非臨床検査から薬価が決まり販売までの間に7~14年が経過します。

その間に余命を告げられた患者は投薬を受けられることもなく、治験に選ばれて未承認薬を服用する以外に手段がないというのが過去の例です。それまでの抗がん剤やC型肝炎の治療薬はインターフェロンやインターロイキンなどのがん細胞増殖抑制作用のある生理活性物質であり、副作用に苦しみながら効果の少ない治療を受けていたという抗ガン治療の変遷があります。

効果が明らかな新薬を早期に使用するために

新医薬品の有効成分審査は日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)が世界最速であり8か月で終了します。しかし、その後の厚労省の審査では優先品目の場合でも6カ月以上かかります。さらに販売認可に至って患者が服用できるまでには2年以上が無駄に過ぎていくため、早急な対応が期待されていますが、拡大治験とも言える以下の制度の採用が始まっています。

1)先駆け審査指定制度

最先端の医療や治療薬の効果が明らかである場合、厚労省の「先駆け審査指定制度」があり、条件を満たせば優先的に承認審査が行われます。PDMAと厚労省が連携してトータル6カ月以内に審査期間を短縮できます。最終的に薬価が決まれば保険適用の処方薬として3割負担、高額療養費、医薬品副作用被害救済制度の対象になります。

2)コンパッショネート・ユース

欧米の医療先進国で行われている、人道的使用を意味するコンパッショネート・ユース(Compassionate Use)として、生命に危険が及ぶ疾患で代替医療が存在しない場合などに、未承認薬の使用を許可する制度です。

日本では人道的見地からの拡大治験として2016年に開始されています。医師が製薬会社に申請して未承認薬の治験の一部として処方を行う制度です。しかし、医師は患者からの要望に対する知識不足があり、また製薬会社に対して安全性・有用性の報告を行う必要があるため、医療機関の負担が大きいという問題があり、拡大治験が行われにくいというのが現状です。

また、日本では「人道的使用」の手続きに4カ月ほどかかるため、その間に患者が亡くなるという非人道的な問題もあり、欧米のように未承認薬の処方には程遠い日本の制度になっています。

3)ドラッグ・ラグと未承認薬の使用

諸外国で承認された薬を日本が承認するまでの期間をドラッグ・ラグといい、アメリカと比較すると2年半から4年ほどのタイムラグがあります。日本が承認するまでに患者に生命の危機がある場合、欧米で承認されている薬であれば未承認薬でも使うことができます。

患者としては、諸外国で承認されていれば日本国内で使用しようと何の問題もなく、余命宣告された場合でも欧米で承認された新薬の使用を選択すれば、余命が延長されるだけでなく治癒に至ることも十分に考えられます。

この場合は医師による個人輸入という形になりますが、C型肝炎治療薬のハーボニーや悪性黒色腫や非小細胞肺がん、腎細胞がんの治療薬、免疫チェックポイント阻害剤(分子標的薬)のニボルマブなど、承認前に服用して治癒に至った患者が多数存在します。

さいごに

C型肝炎治療薬は保険適用になっていますが、分子標的薬では治癒までの医療費が数千万円に及びます。金銭的に余裕のある患者は承認を待つことなく先進医療を受けられるということになりますが、余裕がなければローンを使って上手く交渉すれば余命の宣告を受けた場合でも治癒に至るという時代です。

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