
感染力が強いため家庭内感染が広がると成人でも感染します。小児の場合はとびひと診断された時点で登園や登校禁止などの措置が取られるため、結果的に家庭内感染が起きやすくなります。しかし、接触感染しか起こさないので、皮膚を包帯などで巻いて肌を露出させていない場合は感染しません。成人が感染すると重症化、長期化することがあります。 スポンサードリンク
ー成人のとびひの症状と治療ー
成人の場合、小児と異なる点は、とびひ(伝染性膿痂疹)の中でも、黄色ブドウ球菌の感染による「水疱性膿痂疹」は少なく、溶血性連鎖球菌や表皮ブドウ球菌が原因菌の「痂皮性膿痂疹」がほとんどです。アトピー性皮膚炎を持つ成人がとびひを合併症として発症すると急速に悪化します。
成人に多い痂皮性膿痂疹の場合は小児に比べて急速な感染範囲の拡大があり、全身の皮膚に赤い腫脹が発生することにより分厚い痂皮が生じます。特に炎症や腫脹、膿胞がひどくなると疼痛があるのが特徴です。A型β溶連菌連鎖球菌の毒素(エリストジェニックトキシン)が原因となって起こる症状です。発熱に次いで、咽頭炎やリンパ節の腫脹も見られます。溶血性連鎖球菌に感染した場合は腎障害が起きることがあり、感染すると細菌が血液中に入ることで敗血症を起こす場合もあります。
溶連菌の感染症の治療としてはペニシリンやセフェム系抗生物質の内服が行われますが、ペニシリン系のアモキシシリンとβラクタマーゼ阻害剤としてクラブラン酸カリウム(オーグメンチン)の複合抗生物質が使われます。アモキシシリンは最近の細胞壁の合成を阻害するため、細胞壁を持つ細菌にシンプルに殺菌的に作用します。耐性菌の持つβラクタマーゼによるアモキシシリンの分解を抑えるため、耐性が形成されにくい複合抗生物質です。外用薬としてはエリスロマイシンの軟膏が効果的です。
ー表皮剥離性毒素の中毒症状ー
特に免疫力の低下した高齢者や乳児に多いのが、黄色ブドウ球菌などが発生する毒素による中毒症状として、「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」があり、とびひの合併症、またはとびひに続いて起きることがあります。黄色ブドウ球菌が出す「表皮剥離性毒素」によって、表皮の剥脱を起こすだけでなく、毒素が血管内に入り込むと全身性の皮膚症状が表れます。とびひの症状と勘違いしてステロイドを使うと更に悪化します。
抗生物質により重症化する前に感染拡大を抑えることが先決ですが、皮膚症状が悪化すると治癒までに時間がかかるため、できる限り皮膚に触れないようにする対策が必要になります。爪を切るだけでなく爪の先端に丸みをもたせて肌に傷がつきにくくしたり、患部に抗生物質の軟膏を使ったあとはガーゼかラップで包むなど、肌の露出を防ぐ対策も必要になってきます。痒みがあれば抗ヒスタミン剤の内服を行います。
内服の抗生物質に効果が無い場合は、細菌培養を行って適切な抗生物質を選択しますが、メチシリンに効果が無いと判明した場合はバンコマイシンと使うことになります。
皮膚症状を悪化させないために、毎日の入浴で細菌を洗い流しましょう。ダイレクトに殺菌する逆性せっけんで洗うことができれば問題ないのですが、肌の状態に合わせて塩化ベンザルコニウムの濃度を調節して皮膚の消毒を行った後に抗生物質の軟膏を塗ったのちにガーゼの交換をするというマメなケアを続けることで治ります。

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