
暑い夏に汗をかいて、熱中症予防として大量に短時間で水を飲むと「水中毒」というものが起きます。大量に汗をかいているときに倦怠感やめまいに襲われても、高温の屋外では頭もボーっとするものです。「脱水症状かな?」と思ってさらに水分補給をするのが人間です。そのまま続けて水を飲み続けると脳の腫脹などを招いて、最悪の場合は死に至ることもあります。 スポンサードリンク
ーあなどれない水中毒!!-
一般のアスリートや一般向けのマラソン大会で死亡者が目立っていますが、夏に長距離を走った時によく起きるものです。最近ではダイエット目的で水分を大量に補給した結果、水中毒で死亡したというニュースを見かけます。
水を大量に飲むことは人体に害はないのですが、飲む速さによって悪影響が出てきます。腎臓が処理できる利尿速度は毎分16ミリリットルなので、それを超えると腎臓はナトリウムを再吸収できません。水分だけ再吸収されることになり、尿中にナトリウムが流れ出すため低ナトリウム血症を起こします。
ナトリウムの濃度低下に伴って、疲労感や頭痛を経て昏睡、血中のナトリウム濃度が100mEq/L(食塩0.58g/L)以下になると呼吸中枢の伝達が阻害されて呼吸困難により死に至ります。
ーだからどうすればいいの!?-
疲労感を感じた時点で食塩一つまみ(2~3グラム)を小腸まで流し込めば非常事態を回避できます。急を要しない場合は、水1リットルに対して、砂糖40グラム、塩化ナトリウム3グラムというのが一般的です。
ー汗をかいている時の危険性は?-
アマチュアのアスリートやマラソンランナーの場合、通常はスポーツドリンクを飲んで塩分補給を行います。「体液と同じ浸透圧のナトリウムが含まれていると勘違い」して、それだけで塩分補給になると考えるのが普通の感覚ですが、大きな間違いです。アマチュアの大会でよくあることですが、走り終わった後にスポーツドリンクを一気に飲んで数時間後に死亡とか、ランナーの多くが脳浮腫になっていたなどという話も聞きます。
スポーツドリンクは、塩化ナトリウムだけでなく、ブドウ糖、クエン酸、塩化カリウムその他が含まれているので、浸透圧が体液と同じであるため吸収の速さが水の10倍というだけで、十分な塩分補給にはなりません。ブドウ糖やクエン酸、塩化カリウムなどを追加した影響で、浸透圧調整のために塩化ナトリウムを減量しているので、生理食塩水の30%程度しか塩分摂取はできていないことになります。
熱中症が気になるほど汗をかいている場合、スポーツドリンクだけで1日分のナトリウム摂取をしようと思えば、最低でも約3リットルは必要になります。喉が渇いた時にスポーツドリンクを飲んでいる程度では塩分補給にはなりません。
ーダイエット目的で大量に水分補給?-
水を大量に飲んでダイエットが出来ると実践している人が多いとか?基礎代謝が増えるとか、血液サラサラになるとか、老廃物を排出できるという話も聞きますが、全て科学的にも生理学的にも根拠がないのでやめておきましょう。
そして、精神科でも死亡例が多い水中毒ですが、抗精神病薬の副作用として口喝は割と頻繁に起きます。中枢神経の麻痺も伴ってひたすら水道水を飲み過ぎると一気に低ナトリウム血症を起こして、その他の電解質異常から意識の混濁まではあっという間です。

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