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鳳月杏の男役はなぜ幅広い?月組・花組の歩みと『NINE』までを配役から読む

月と楽譜をモチーフにした舞台の水彩イラスト 宝塚

鳳月杏を知るとき、月組トップスターという肩書きだけでは見えてこない面白さがあります。月組から花組へ、そして月組へ戻った歩みを、出演作品と役の種類からたどると、一つの型に収まらない男役像が浮かび上がるからです。

2026年10月9日時点で、鳳月杏は月組トップスターです。退団が発表されていますが、退団したわけではありません。本記事では公式のプロフィール、公演案内、退団会見をもとに、確認できる配役の変化と、その読み解き方を整理します。

最初に押さえたいプロフィールと組替え

公式プロフィールによると、鳳月杏は千葉県船橋市出身。誕生日は6月20日、身長は172cm、愛称は「ちなつ」です。初舞台は2006年3月、宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』でした。

公式の退団会見に掲載された略歴では、2004年4月に宝塚音楽学校へ入学、2006年3月に宝塚歌劇団へ入団。同年5月に月組へ配属されています。花組への組替えは2014年12月、月組へ戻ったのは2019年4月、月組トップスター就任は2024年7月です。

ここで「初舞台の組」と「最初に配属された組」を分けておくと、経歴を読み違えません。初舞台が宙組公演だったからといって、宙組でキャリアを積んだという意味にはならないのです。

組替えの年だけを並べるより、その間にどんな役を演じたかを追うと、鳳月杏ならではの役の幅を具体的に理解できます。花組時代と月組時代を分断せず、一続きの経験として見られる点が、この経歴の魅力だと思います。

『スターダム』から『CASANOVA』へ──役の立場が変わる面白さ

花組時代の節目として挙げたいのが、2015年のバウホール公演『スターダム』です。鳳月杏はリアム役で主演しました。主演という位置から物語を動かす経験は、その後の役を読む際の一つの基準になります。

一方、2019年の『CASANOVA』ではコンデュルメル夫人を演じています。男役のキャリアを考える際に、女性役を例外として脇へ置いてしまうのは惜しいところです。物語の中で誰に働きかけ、どのような関係を生む人物なのかに注目すると、性別の枠だけでは説明できない配役の広がりが見えてきます。

ただし、配役の事実だけで「本人がどのような心理で演じたか」までは断定できません。本記事で述べるのは、役の組み合わせから読み取れるキャリアの特徴です。具体的な演技の違いを比べたい場合は、同じ場面の公式映像や公演資料を合わせて確認すると、印象と事実を区別しやすくなります。

私がこの二つの役から興味を持つのは、主演を経験した後も、物語の中心に立つ方法が一通りではないことです。主役の視点を担うことと、周囲の人間関係を強く動かすこと。その両方を経歴の中で考えられるのは、配役をたどる楽しみの一つでしょう。

月組へ戻ってからの主演作は、人物の条件が違う

2022年の『ELPIDIO』では、ロレンシオとアルバレス侯爵という二つの役名が公式の出演歴に記されています。ここで注目したいのは、単に「主演作が増えた」という点ではなく、一つの公演の中でも異なる人物の条件を扱っていることです。

2023年の『応天の門』では在原業平、2025年の『花の業平』でも在原業平を演じています。同じ歴史上の名前が登場しても、作品の原作、物語の焦点、登場人物の関係が変われば、舞台上で求められる役割は同じにはなりません。

「同じ業平だから同じ演技だった」とまとめるより、まず作品ごとの人物設定を確認するほうが、詳しいファンにも発見のある読み方だと思います。比較の入口は、台詞の雰囲気を記憶で語ることより、どの物語の中の業平なのかを整理することにあります。

さらに2025年の『GUYS AND DOLLS』ではスカイ・マスターソン、2026年1月の『侍タイムスリッパー』では高坂新左衛門。人物の時代、職業、周囲との距離が変わるため、作品名を並べるだけでも、役作りの条件が広いことが分かります。

トップお披露目を「一作品」だけで考えない

トップ就任後の最初の公演は、2024年8月の全国ツアー『琥珀色の雨にぬれて』でした。その後、大劇場でのトップお披露目公演として『ゴールデン・リバティ』『PHOENIX RISING』が上演されています。

宝塚の「お披露目」という言葉は、全国ツアーなどでの最初の公演を指す場合と、大劇場での披露目を指す場合があります。どちらの話かを確認すると、就任時期と公演時期の混乱を避けられます。

また、芝居とショーの二本立てでは、芝居の主人公だけでトップスター像を捉えきれません。物語の人物として場面をつなぐ姿と、ショーで組の中心に立つ姿は、同じ公演の中にある別の観察点です。

下の公式映像は『ゴールデン・リバティ』『PHOENIX RISING』の初日映像です。短く編集された紹介映像なので、公演全体の評価を決める材料というより、衣装、場面の種類、芝居とショーの切り替わりを知る入口として見るのがよさそうです。

宝塚歌劇公式:月組『ゴールデン・リバティ』『PHOENIX RISING』初日映像

呂布からグイードへ──2026年の配役を並べる意味

2026年の大劇場公演『RYOFU』では呂布を演じました。宝塚大劇場は4月4日から5月17日、東京宝塚劇場は6月6日から7月19日の日程で、この記事の確認時点では公演を終えています。

歴史を題材にした作品を見るときは、歴史上の人物に関する一般的な知識と、その舞台が描く人物像を分けることが大切です。史実の説明だけでは舞台の構成を語れず、反対に舞台の筋をそのまま史実として紹介することもできません。

公式の初日映像では、作品の舞台上の規模や場面の構成を確認できます。全編を見た体験とは区別しながら、鳳月杏の経歴の中にどのような題材が加わったかを考える資料になります。

宝塚歌劇公式:月組『RYOFU』初日映像

その次に注目したいのが、2026年9月10日から27日まで東急シアターオーブで上演された『NINE』です。鳳月杏はグイード・コンティーニ、天紫珠李はルイーザ・コンティーニを演じ、宝塚での潤色・演出は指田珠子が担当しました。

公式案内には、脚本アーサー・コピット、作詞・作曲モーリー・イェストン、マリオ・フラッティによるイタリア語作品を基にするクレジットが掲載されています。再演や翻案を語るなら、こうした作品の出自と宝塚版の担当者を確認しておくと、作品そのものの歴史と今回の舞台を混同しません。

呂布とグイードを並べて興味深いのは、人物の強さを表す条件が大きく変わることです。役の肩書きや舞台の世界が変わったとき、主役は誰との関係によって立ち上がるのか。この問いを持つと、作品をまたいだ配役の読み方が深まります。

退団会見は、経歴を本人の言葉と照合する資料

2026年5月19日に行われ、5月20日に公式サイトへ掲載された退団会見では、花組への組替えが転機だったことや、『侍タイムスリッパー』で感じた新しい芝居の楽しさが紹介されています。

ここは、外から経歴を眺めるだけでは分からない部分を、本人の発言で確かめられる重要な資料です。ただし、会見の一つの言葉から、すべての役や時期の気持ちを推測してしまうのは避けたいところ。発言された公演や文脈に沿って読むほど、情報の価値が高まります。

退団公演は『天穹のアルテミス』『Belle Époque』。公式の出演予定では、宝塚大劇場が2026年12月12日から2027年1月24日、東京宝塚劇場が2027年2月13日から3月28日と案内されています。今後の予定なので、観劇を検討する際は最新の公演案内を確認してください。

鳳月杏の歩みを楽しむための三つの見方

第一に、組替えを昇進の年表だけにせず、そこで出会った役の種類と結び付けること。第二に、同じ人物名の役でも、作品ごとの設定と演出の担当者を確かめること。第三に、トップ就任後の芝居とショーを別々の観察点として見ることです。

この三つを意識すると、「幅広い」という言葉を、具体的な作品と配役で説明できるようになります。私には、鳳月杏の経歴は一つの完成された型へ一直線に進んだ道というより、異なる役の条件を積み重ねてきた道として映ります。

初めて知る方なら、気になった一作品から。詳しい方なら、花組時代の役と月組へ戻った後の役を並べて。公式の出演歴を手がかりに、自分が確かめたい問いを作ってみると、プロフィールを読むだけでも楽しみが増えるはずです。

公式資料

情報確認日:2026年10月9日。配役と日程は公式資料に基づき、役の組み合わせについての読み解きは本記事の考察です。

宝塚歌劇:鳳月杏プロフィール・出演歴・出演予定

宝塚歌劇:鳳月杏の退団会見

宝塚歌劇:月組『NINE』公演案内

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