昔の『ME AND MY GIRL』の映像を探して、2016年花組の配役表を開いたら、同じ人の名前が違う役にも載っている。どの名前を見れば、自分が見る映像の配役が分かるのでしょうか。
この公演は、本公演の役替わりに加え、新人公演にも幕や劇場による配役の違いがあります。名前を一度に覚えようとするより、まず物語の関係、次に公演の種類、最後に収録日の順で読むと整理しやすくなります。
最初に押さえたいこと
本公演のビルは明日海りお、サリーは花乃まりあ。複数名が載る役は役替わりとして読み、新人公演の欄と分けます。日別の組み合わせは、名前の並び順だけで決めないようにしましょう。

まずはビルとサリー。そして二人を迎える伯爵家です
舞台は1930年代のイギリス。下町ランベスで育ったビルが、ヘアフォード伯爵家の後継ぎとして迎えられるところから物語が動きます。恋人のサリーは、彼と一緒に屋敷へやって来ます。
伯爵家に受け入れられるため、ビルは紳士らしい振る舞いを学ぶことになります。ところが、彼が変わるほど、サリーは自分が一緒にいてよいのか悩み始めます。後継ぎの話と恋の話が、別々に進む作品ではないのですね。
ビルが伯爵家にふさわしいかを判断するのが、遺言執行人のマリア公爵夫人とジョン卿です。公式のあらすじでは、ビルに懐疑的なジョンに対し、マリアは紳士へ育てようとレッスンを始めます。

ここを押さえると、ジョン役を誰が演じるかは、ビルを迎える側の人物を見る楽しみにつながります。単に「次は違う衣装の役」という覚え方より、物語のどこに立つ人なのかが分かります。
ジャッキーとジェラルドは、恋の向きが違います
ジャッキーは、伯爵家の財産を当てにしていた一人。新しい後継ぎのビルを振り向かせようとし、婚約者ジェラルドに婚約指輪を返します。ジェラルドは、ジャッキーとの関係を追ううえで覚えておきたい役です。
ビルとサリーの結び付きに対し、こちらは婚約をめぐって揺れる二人。同じ恋愛に関わる人物でも、物語の出発点は違います。役名が混ざってしまう方は、まず二組の関係を分けてみてください。

芹香斗亜の名前が二つの役に。ここが面白い!
2016年花組の本公演では、ジョン卿に芹香斗亜と瀬戸かずや、ジェラルドに水美舞斗と芹香斗亜が記されています。芹香斗亜の名前は、ジョンとジェラルドの両方に登場するわけです。
| 本公演の役 | 公式の掲載名 | 見る相手の手掛かり |
|---|---|---|
| ジョン卿 | 芹香斗亜/瀬戸かずや | ビル・マリア |
| ジェラルド | 水美舞斗/芹香斗亜 | ジャッキー |
| ジャッキー | 柚香光/鳳月杏 | ビル・ジェラルド |
| パーチェスター | 鳳真由/柚香光 | 伯爵家の周囲 |
| マリア | 桜咲彩花/仙名彩世 | ビル・サリー |
表が見切れる場合は、横へスクロールできます。
この表は、役ごとに公式配役表の記載を整理したものです。表の一列目の出演者だけを縦に並べて「同じ日の組」とすることはできません。役替わりの実施期間を確認する作業が別に必要です。
注意
配役表の名前の掲載順だけでは、日別の組み合わせは確定できません。映像を選ぶときは、収録日とその商品の配役表示も確認しましょう。
ジョンは、ビルを伯爵家の後継ぎとしてどう見るかに関わります。ジェラルドは、ジャッキーとの恋の関係から物語へ入る人物。同じ出演者を追う場合でも、注目する相手が変わるのです。
演技の優劣より、まず「誰に向けた行動か」を見てみよう
たとえばジョンの場面では、ビルやマリアとのやり取りを追う。ジェラルドなら、ジャッキーへの気持ちが場面のどこに表れているかを探す。これは、配役とあらすじから私が提案する見方です。
衣装や声の違いにすぐ結論を出さなくても、「相手が変わると、同じ出演者の何に目が向くか」を楽しめます。実際の映像を見て気付いたことは、場面を添えて自分の言葉で残しておくと、次の配役を見たときの比べ方も具体的になります。

役替わりが多いのはなぜ?演出家の説明にヒントがあります
公式の演出家インタビューでは、三木章雄が、2016年の花組で多くのダブルキャストを組んだ背景として、若手と中堅の充実を挙げています。同じ役を担当する人の演技を見られることにも触れています。
この説明を読むと、観客が複数の配役を楽しめるだけでなく、演じる側にも互いの役づくりを目にする機会がある、と考えられます。ただし、その狙いから、実際の全公演でどんな演技の差が生まれたかまで断定することはできません。
同じインタビューでは、人物が行動する根拠や譲れないものをつかむことも語られています。そこで私なら、配役ごとの違いを見る前に、人物が何を守ろうとしているのかを一つメモします。

「ランベス・ウォーク」は、楽しい曲だけで終わらせたくない
三木章雄は、公式インタビューで、庶民と貴族が同じステップで踊ることを、階級の壁が崩れる場面として説明しています。曲の明るさだけでなく、誰と誰が一緒に踊るのかにも意味があるのです。
下町と伯爵家の違いを、冒頭で分けた関係に戻してみてください。ビルとサリーの居場所がどうつながるか、という問いから歌の場面へ入れます。舞台を見た感想の借り物ではなく、作品を理解する手掛かりとして使える公式の解説です。
新人公演は、ビルとサリーが幕によって替わります
さらに配役表の新人公演欄を見ると、ビルには優波慧と綺城ひか理、サリーには城妃美伶と音くり寿が記されています。ここは、本公演の役替わりと同じ表へ混ぜない方が分かりやすいところです。
| 新人公演の役 | 宝塚 一幕→二幕 | 東京 一幕→二幕 |
|---|---|---|
| ビル | 優波慧→綺城ひか理 | 綺城ひか理→優波慧 |
| サリー | 城妃美伶→音くり寿 | 音くり寿→城妃美伶 |
表が見切れる場合は、横へスクロールできます。
宝塚と東京で、担当する幕が入れ替わっています。新人公演の映像紹介で一人の名前だけを見つけても、その人がどの劇場の何幕を担当したかまで確認すれば、もう一人の記載を見落とさずに済みます。
ビルだけでなくサリーも同じ軸で整理すると、名前がぐっと読みやすくなります。ただし、この表をもとに、本公演にも同じ幕別交代があると考えないでください。公演の種類が違います。

ジェラルドとジャッキーは、劇場で担当が替わります
新人公演のジェラルドは、宝塚大劇場が聖乃あすか、東京宝塚劇場が帆純まひろ。ジャッキーは、宝塚が帆純まひろ、東京が聖乃あすかです。
こちらは、同じ日の一幕と二幕で替わるという表記ではなく、劇場ごとの配役として記されています。「役替わり」と一語で片付けると、幕別と劇場別という違いが隠れてしまいます。
映像を選ぶときは、公演名の後ろまで読んでみて
作品名だけでなく、年、組、劇場、本公演か新人公演か、収録日を確認します。2016年花組を探しているつもりでも、別の年の月組や、別の劇場での上演が候補に入ることがあります。

映像の全編が、すべての役替わりを収録しているとは限りません。見たい人の名前が配役表にあっても、その商品にその配役が入っているかは別です。販売元の収録内容を見てから選ぶと、思い違いを減らせます。
たとえば公式商品のブルーレイTCAB-037は、2016年5月20日収録、本編はAパターンと明記されています。ジョンは芹香斗亜、パーチェスターは鳳真由、マリアは桜咲彩花、ジェラルドは水美舞斗、ジャッキーは柚香光です。
同商品には役替わりBパターンのダイジェストも含まれますが、Bパターンの全編という意味ではありません。商品名だけでなく「本編」「ダイジェスト」の違いまで読むと、見たい配役を探すときの判断が具体的になります。末尾の公式商品ページから、収録内容とサンプル映像も確認できます。



