2CVの足回りを下から見ると、タイヤのすぐ上にコイルばねが見つからず、不思議に感じます。代わりに目につくのは、車体の左右に横たわる長い筒。これは、ばねを収めるサスペンションポットです。
2CVでは、車輪の動きをアームと引き棒で伝え、車体横のポットの中にあるコイルばねを働かせます。タイヤの真上にばねが立つ形式だけを思い浮かべると、見つけにくいわけですね。
今回は、量産2CVのばねの考え方と、復刻部品メーカーが公開するポットの資料から、部品の位置と役割をたどります。年式ごとの減衰装置の違いは、ばねの話と分けます。
要点
横長のポットの中にあるもの/車輪とばねを結ぶアーム・引き棒/油圧ダンパーと油気圧式のばねを混同しないこと
黒い筒は、単なる大きなショックアブソーバー?
ポットの中には、前輪用と後輪用のばね
2CV Méhari Club Cassisは、同社が製造するサスペンションポットを、左右それぞれの車体横に置く部品として紹介しています。金属の筒の中には、前輪側と後輪側に対応する二つの独立したばねがあり、それぞれが引き棒でアームにつながります。

部品単体を見ると、中央に太い円筒があり、両端には細い棒が延びています。外から見える太い筒の長さを、そのまま一本のコイルばねの長さだと考えないことがポイントです。
また、細長い筒を見るとショックアブソーバーを連想しますが、このポットはコイルばねを収める装置です。形が似ていることと、役割が同じことは別に見てください。
車輪から少し離して、横向きに置く
車輪が段差で上下したとき、ばねが必ずその真上で縮む必要はありません。間に動きを伝えるアームや棒があれば、離れた場所のばねを働かせることができます。
2CVの引き棒は、アーム側の動きをポットへ伝える部品です。現行の復刻部品の説明では、棒の内側がばね側の皿に、外側が端金具や接続片を介してアームに結ばれる構成を確認できます。

前後輪の動きを、片側のポットへ伝える
同じ側の前後を、ポットを通じて見る
メーカーの歴史資料は、量産化に向けて選ばれた方式を、コイルばねと前後の連関を持つサスペンションとして説明しています。復刻部品メーカーの資料を合わせると、片側のポットに前輪側と後輪側のばねがあることを、部品から確認できます。

図では車体片側のアーム、引き棒、ポットの関係を取り出しています。左右の装置を一本につないだ図でも、車高調整の寸法図でもありません。まずは、前後の動きが同じ側のポットへ伝わるという位置関係を見てください。
ここでの「連関」は、前輪と後輪がいつも同じ角度で動く、という意味ではありません。また、前後の車輪が一本の固定した車軸で結ばれた構造として読むのも違います。車輪を支えるアームと、ばねへ力を伝える部品を分けると理解しやすくなります。
部品を三つに分けて追う
| 見る部品 | 主な役割 |
|---|---|
| サスペンションアーム | 車輪の動きを受ける |
| 引き棒 | アームとポット内のばね側を結ぶ |
| ポット内のコイルばね | たわみ、元へ戻ろうとする |
表は左右にスクロールできます。表の参考:MCC:復刻サスペンションポットの製品資料
車輪の動きを受けるアーム、動きを伝える引き棒、弾性を持つばね。写真では重なって見える部品も、この三つの役割に分ければ、どこを見ているのかを確かめられます。
ばねだけを拡大した写真では、車輪とどう結ばれているかが分かりません。一方、車全体の下回り写真だけでは細い引き棒を見落としがちです。全体の位置関係と、部品単体を行き来するのがおすすめです。
ばねとダンパーは、別の仕事をする
重さを支えるばね、揺れが続くのを抑えるダンパー
ばねは力を受けてたわみ、元へ戻ろうとします。段差を越えた後も、そのままでは揺れが続こうとします。動きに抵抗を与えて揺れを抑えるのがダンパー、減衰装置です。

量産初期の方式を紹介するシトロエンの歴史資料には、摩擦を利用するダンパーが登場します。一方、アルゼンチン市場の2CVと3CVを比べた公式記事は、慣性・摩擦式から、各輪の油圧ダンパーへの変化を説明しています。
大切なのは、この市場・世代の違いを残して読むことです。2CVの長い生産期間を、一種類のダンパーで説明することはできません。「2CVは全部この減衰装置」と、異なる年式の写真を混ぜないようにしましょう。
油圧ダンパーがあるから、DSと同じばね?
油圧ダンパーと、油気圧式サスペンションのばねは同じものではありません。油を使って揺れを抑える部品があっても、車体を支えるばねまでガスばねになった、とは限りません。
シトロエンという名前からDSやSMの油気圧式を思い浮かべる方もいるでしょう。2CVの説明では、まずコイルばねのポットを見つけます。DSなどの丸いスフェアとは、見た目もばねの仕組みも違います。
試作の話と、量産された車を分けて読もう
シトロエンが公開するポール・マジェスの歴史記事には、1944年の試作でガスと液体を使った方式が検討されたことも記されています。その後、2CVの量産に向けては別の方式が選ばれました。
この試作の説明だけを切り出すと、「2CVのばねは最初からガスだった」と思ってしまうかもしれません。しかし、開発で検討された方式と、市販車に採用された部品は分けて読む必要があります。
同じ記事が紹介する油気圧式の実用化は、1954年のトラクシオン・アヴァン15 Six Hの後輪、1955年のDS19へとつながります。同じメーカーの技術史でも、車種と年を揃えると、違いが分かります。

写真で確かめるなら、筒から端の金具へ
最初に車体横の太いポットを探し、次に両端の細い引き棒をたどり、アームとの接続を見る。この順番なら、部品名だけを覚えるより形と役割を結び付けられます。
今回の部品画は、復刻メーカーの現行製品・技術資料を手がかりに、仕組みを見分けるために制作したものです。すべての年式の純正形状・寸法を示した整備図ではありません。現車の仕様を調べるときは、その車の年式と市場に合う資料で確かめてください。
注意
ばねや支持部には力がかかります。この記事の図を使った分解・車高調整は行わず、実作業は対象車の資料を持つ専門店へ相談してください。
「変わった乗り心地の車」で終えず、どこにばねを置き、何がそこまで動きを伝えるかを見る。長い筒を入口にすると、2CVの足回りをもう少し具体的に楽しめます。

