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宝塚『ベルサイユのばら』の「編」を読む|上演記録・あらすじ・配役から分かる焦点の違い

開いた本とバラ、王冠、装飾の剣を組み合わせたオリジナルイラスト 宝塚

宝塚の『ベルサイユのばら』を調べると、フェルゼン編、オスカル編、オスカルとアンドレ編など、複数の呼び名に出会います。同じ原作を舞台にしているのに、なぜ名前が違うのでしょうか。

最初に知っておきたいのは、編の名前が、物語を読む入口になるということです。ただし、名前だけで場面の順番や登場人物の出番まで決めつけることはできません。公演ごとに、上演年、組、あらすじ、配役を合わせて確認すると、違いが具体的になります。

ここでは、公式の上演記録と2013年月組、2024年雪組の資料を使って、資料から読み取れる範囲の比較を行います。筆者の観劇体験や、未確認の舞台演出を評価する記事ではありません。情報確認日は2026年10月11日です。

年表の「編名」は、作品の焦点を探す手掛かり

宝塚歌劇での初演は1974年の月組です。公式の宝塚大劇場・東京宝塚劇場の上演記録を見ると、その翌年の花組と雪組には「アンドレとオスカル」という副題があります。初演と同じ作品名が続いていても、すでに人物名を添えた上演が行われていました。

1989年には、雪組の「アンドレとオスカル編」と星組の「フェルゼンとマリー・アントワネット編」が並びます。2001年にも、星組の「オスカルとアンドレ編」と宙組の「フェルゼンとマリー・アントワネット編」が記録されています。

私は、この並びを「古い版から新しい版へ順番に置き換えられた」と読むより、一つの原作に複数の入口が用意されてきたと読むほうが、作品史を理解しやすいと思います。同じ時期にも異なる副題があるため、後の公演だけを正解として覚える必要はありません。

公式記録の例編・副題資料を読む際の問い
1989年雪組アンドレとオスカル編二人の関係をどのように説明しているか
1989年星組フェルゼンとマリー・アントワネット編王妃と貴族の立場が恋にどう関わるか
2013年月組オスカルとアンドレ編恋愛と、オスカルの職務上の選択がどう結びつくか
2024年雪組フェルゼン編題名にない主要人物も含め、誰が配置されているか

ここに挙げた公式記録のページは2013年までを掲載しています。表は全公演の一覧ではなく、編名の変化を考えるための抜粋です。2024年については、その年の公演ページを別に確認しました。

2013年月組は、恋の前に「どこを守るか」を読む

2013年月組の公式あらすじは、オスカルとアンドレが幼い頃から共に育った関係を説明しています。オスカルは将軍家の娘で、男子として育てられた人物。アンドレは、その家の乳母の孫として屋敷へ迎えられます。

この出発点を押さえると、二人を単に恋人の組み合わせとして記憶するだけでは足りないことが分かります。同じ場所で育っていても、家柄や立場が同じではありません。長い付き合いと身分の違いが重なる関係として、あらすじを読み進められます。

また、オスカルは王宮を守る近衛隊から衛兵隊への転属を願い出ます。近衛隊という言葉が初めての方は、ここでは王宮に近い場所を守る部隊、と考えると入りやすいでしょう。公式説明では、人民の苦しい暮らしを知ることが、転属の決断につながっています。

私がこの資料で注目したいのは、転属を単なる職場の変更として扱わないことです。守る対象、接する人、求められる命令が変わるため、人物が何を大切にするかを問う出来事として読めます。恋愛のあらすじを探していた読者にも、職務の選択という別の入口が開きます。

衛兵隊の隊士は、最初からオスカルを受け入れるわけではありません。出自の異なる相手と信頼を築くことが、命令する立場に就くこととは別の課題になっています。私はここに、肩書きを得ることと、その肩書きに見合う関係を作ることの違いを見いだします。

この読み方は、実際の舞台で誰の演技が優れていたか、という評価とは分けておきたいものです。公式あらすじから確認できるのは、転属、隊士との関係、命令への判断などの物語上の出来事です。声の響きや表情、場面の緊張感は、映像などの別の資料を確かめてから語る必要があります。

2024年雪組の配役表には、二組の恋人が並ぶ

2024年雪組は、初演から50周年の年に上演されたフェルゼン編です。作品紹介には、革命へ向かうフランスを背景に、二組の恋人の許されない恋を描くことが説明されています。フェルゼン編という名前でも、題名の人物だけを切り離した物語として案内されているわけではありません。

公式配役表では、フェルゼンが彩風咲奈、マリー・アントワネットが夢白あや、オスカルが朝美絢、アンドレが縣千です。四人を一度並べて確認すると、副題と登場人物の一覧が同じ意味ではないことを実感できます。

フェルゼンの名を入口にすることと、オスカルやアンドレが登場しないことは、別の話です。逆に、四人の役があるからといって、全員の場面量が同じとも言えません。配役表が示すのは、誰がどの役を担うかであり、台詞の量や場面の長さではないからです。

初心者が資料を整理するなら、「題名にある人物」「配役表にいる人物」「あらすじに書かれた関係」を別々にメモすると便利です。詳しいファンにも、記憶している別年の配役を今回の公演へ無意識に当てはめないための確認になります。

たとえば2024年のオスカルを読むとき、2013年月組のあらすじをそのまま全場面の説明として使うことはできません。人物の基本設定を理解する助けにはなりますが、編も年も違います。資料を一緒にする際には、それぞれがどの公演を説明しているかを残しておくことが大切です。

再演の演出差は、制作発表と舞台記録を区別する

2013年月組の制作発表会レポートには、脚本・演出の植田紳爾が、最後にオスカルとアンドレを乗せた馬車をクレーンで空中へ動かす場面について説明したことが記録されています。

これは具体的な舞台装置への言及ですが、制作発表時の説明という資料の性質も覚えておきたいところです。実際の各回の動きや、過去公演と比べた距離、客席からの見え方まで、この記録だけで断定することはできません。

再演を調べる面白さは、同じ結末の場面を、どのような形で見せようと考えたのかを追えることです。一方で、舞台装置の計画と、その場で受け取った印象を混ぜると、見ていない公演の感想まで作ってしまいます。

私は比較メモを作る際、「制作側が説明したこと」と「映像に映っていること」を分けるのがおすすめだと思います。前者では構想の言葉、後者では収録された場面を扱います。この区別があると、演出の変化を細かく調べても、根拠の範囲が分かりやすくなります。

公式の短い舞台映像は、全編の代わりにしない

2024年雪組の公演ページには、初日舞台映像のロング版が案内されています。公式に紹介された場面を確認できる入口です。ただし「ロング」と付いていても、公演全編の収録映像とは異なります。

映像を見る前に四人の配役を確認しておくと、誰の場面が紹介されているかを整理しやすくなります。見終わった後は、映っていた場面と、映っていないため判断できない場面を分けてください。短い紹介映像の編集順を、そのまま本編の場面順として覚えることも避けたいところです。

「どの編がよいか」の前に、知りたい問いを選ぶ

オスカルとアンドレの関係を知りたい人なら、二人の生い立ちや立場が詳しく説明された資料から入ると理解しやすいでしょう。フェルゼンと王妃を軸に考えたい人なら、フェルゼン編の公演紹介と配役を合わせて読む方法があります。

長く作品を追っている方は、同じ人物が別の編でどこに置かれるか、という問いを持つと、新しい発見につながります。ただし、出番が増えた、人物像が変わったと結論を出すには、対応する脚本や公演映像などを追加で確認する必要があります。

今回の資料から言えるのは、複数の編が上演されてきたこと、2013年月組のあらすじに職務と身分の選択があること、2024年雪組のフェルゼン編にもオスカルとアンドレの配役があることです。その先の舞台の印象は、自分が確かめた資料の範囲で育てていくのが、再演を長く楽しむ方法だと思います。

確認した公式資料

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