花組の舞台で星空美咲さんが気になったら、次はどの作品を観ればいいのでしょう。『エリザベート』の皇妃とは違う役も知りたいけれど、出演作の一覧だけでは選びにくいですよね。
そんなときに手がかりになるのが、公式プロフィールの「好きだった役」です。星空さんが挙げている役には、『銀ちゃんの恋』の小夏、『冬霞の巴里』のアンブル、『激情』のカルメンが並んでいます。映画の世界で暮らす女性、弟と復讐を誓う姉、自由に生きる女性。今回はこの三人から、星空さんの出演作をたどってみましょう。
- 小夏・アンブル・カルメンは、公式プロフィールに「好きだった役」として載る人物です。
- 同じ星空さんでも、物語の中で相手と結ぶ関係が大きく違います。
- 配役と人物の立場を先に知ると、自分が観たい作品を選びやすくなります。

星空美咲さんの「好きだった役」を、作品選びの入口に
星空さんは花組のトップ娘役。初舞台は2019年4月の『オーシャンズ11』で、その後は花組の舞台に出演してきました。公式プロフィールの愛称は「みさき」です。
2021年には『PRINCE OF ROSES』のイザベル、『銀ちゃんの恋』の小夏を演じ、翌2022年には『冬霞の巴里』のアンブルへ。2023年の全国ツアーでは『激情』のカルメンを務めています。現在の花組『エリザベート』では、タイトルロールのエリザベート役です。
この並びを見ると、大きな劇場の皇妃にたどり着くまでに、違う時代や国で生きる人物を演じてきたことが分かります。だから、最初から一つのイメージに決めなくても大丈夫。「この役の星空さんも知りたい」と、一作ずつ広げていけます。
公式プロフィールに載る好きな役は、この三つだけではありません。『ドン・ジュアン』のマリアや、『マジシャンの憂鬱』博多座公演のヴェロニカも挙がっています。今回の三役は順位をつけた代表作ベスト3ではなく、人物の立場が違う三作品を選んだ、鑑賞の入口です。
小夏を知るなら、2021年花組『銀ちゃんの恋』へ
銀ちゃんの恋人だけれど、二人だけの話ではありません
『銀ちゃんの恋』は、つかこうへいさんの『蒲田行進曲』をもとにした作品。2021年花組公演では、映画俳優の倉丘銀四郎を水美舞斗さん、小夏を星空さん、大部屋俳優のヤスを飛龍つかささんが演じました。
銀ちゃんは、自分が主役でないと気が済まない俳優です。恋人の小夏と、銀ちゃんを慕うヤスは、その振る舞いに振り回されます。小夏の妊娠をきっかけに、銀ちゃんは自分の都合を優先し、小夏とヤスの結婚を考え始めます。
ここで小夏を、銀ちゃんの隣にいるヒロインというだけで見てしまうと、物語の大事なところを取り逃がしてしまいそうです。ヤスが何をしてくれるのか、それを受けた小夏の気持ちがどう変わるのか。三人のつながりが、お話を動かしていきます。
小夏の立場から観ると、映画現場の人情が近くなる
小夏の出産費用を稼ぐため、ヤスは危険なスタントの仕事を引き受けます。自分を大切にしようとする相手と、これまで心を向けていた相手。小夏は、その両方を前にする人物です。
星空さんを中心に観たい日は、銀ちゃんの大きな行動だけでなく、そのあと小夏が誰と向き合うのかにも目を向けてみてください。筋を知ってからでも、恋人としての気持ちと、これからの暮らしを考える気持ちを追っていけます。
舞台は映画に関わる人たちの世界です。笑えるやり取りと切実な生活が隣り合う作品に触れたいなら、この小夏が入口になります。公式の映像商品では、2021年9月10日のシアター・ドラマシティ公演が収録されています。別の年の同名作品を選ばないよう、出演者欄に星空さんの名前があるかも確かめましょう。
アンブルは、永久輝せあさん演じる青年の「姉」
『冬霞の巴里』では、同じ過去を抱えて帰って来る
2022年の『冬霞の巴里』で星空さんが演じたアンブルは、永久輝せあさん演じるオクターヴの姉です。後のトップコンビとして二人を知った方には、この関係が意外かもしれません。
舞台は19世紀末のパリ。幼い頃に父を失った姉弟は、母と叔父への復讐を胸に、祖父の葬儀をきっかけに戻って来ます。寄宿学校を出たあと、弟は新聞記者に、姉は歌手になって、それぞれ暮らしていました。
アンブルは、弟の夢を応援するだけの姉ではありません。二人は、父の死をめぐる過去を共有し、復讐という目的を持っています。星空さんの出演作を恋愛のヒロインばかりだと思っていたら、この役は違う入口を見せてくれます。
相手役の名前が同じでも、二人の関係は変わる
この作品は、古代ギリシアの悲劇『オレステイア』をモチーフに、指田珠子さんが作・演出を手がけています。華やかなパリという言葉だけから、明るい恋物語を思い浮かべないほうが入りやすいでしょう。父の死、残された家族、帰郷した姉弟の目的が物語の土台です。
星空さんを観るときは、アンブルが弟と同じ目的を持つ人だと覚えておく。それだけで、二人が一緒にいる場面の受け取り方も変わります。恋人同士として近づく二人を観るのとは、出発点が違うのです。
配役表では「アンブル【オクターヴの姉】」と明記されています。映像の紹介で永久輝さんと星空さんの名前が並んでいても、いつも同じ男女の関係を演じているわけではありません。出演者から作品を選ぶ楽しみに、人物関係を確かめるひと手間を加えてみてください。

カルメンでは、ホセが星空さんの演じる女性に惹かれていく
翌2023年の全国ツアーは、姉弟から男女の物語へ
2023年花組全国ツアー『激情』では、永久輝さんがドン・ホセ、星空さんがカルメンを演じました。前年の『冬霞の巴里』と主な出演者を見比べると、名前は同じでも、二人の関係がまったく違うことに気づきます。
『激情』は、メリメの『カルメン』をモチーフにした作品です。軍の下士官ホセは、自由に生きるカルメンに魅了され、彼女への愛によってそれまでの道から外れていきます。柴田侑宏さんの脚本、謝珠栄さんの演出・振付で上演されました。
アンブルは、弟と過去や目的を共有する人物。カルメンは、ホセが心を奪われる人物です。同じ二人の舞台を続けてたどるなら、この違いを先に知っておくと、作品を選ぶ理由がはっきりします。
「好きになられる人」の側からも物語をたどる
ホセの変化が大きな筋になっている作品ですが、星空さんに注目して観るなら、カルメンがどんな人として登場し、相手の気持ちにどう向き合うのかを追ってみましょう。ホセの恋だけを追う日とは、別の見方ができます。
小夏のように、相手の行動を受けて気持ちが動いていく人物と見比べるのも一つの楽しみです。ただ、三人の女性を「強い」「弱い」の一言で並べるより、それぞれに相手との関係や置かれた事情が違うと考えるほうが、作品に近づけます。
このカルメンは2023年花組全国ツアーの役です。『激情』は1999年宙組で初演され、星組や月組でも再演されてきました。星空さんの出演映像を探すときは、作品名だけでなく「2023年・花組・全国ツアー」の表示も見ておきたいところです。
どの星空さんから観る?三作品の選び方
まず一本を決めるために、物語の入口を並べてみました。演技に点数をつける表ではなく、今の自分が観たいお話から選ぶための案内です。
| 作品・公演 | 星空さんの役 | こんなお話を観たい日に |
|---|---|---|
| 2021年花組『銀ちゃんの恋』 | 小夏 | 映画の世界の人情と、三人の関係 |
| 2022年花組『冬霞の巴里』 | アンブル | 同じ過去を抱えた姉弟の復讐劇 |
| 2023年花組全国ツアー『激情』 | カルメン | 自由に生きる女性と、恋に傾く男の物語 |
小夏は水美さんと飛龍さん、アンブルとカルメンは永久輝さんとの人物関係が、作品に入る手がかりになります。出演作を年代順に全部追わなくても、今気になる人物から選んで構いません。
映像商品や番組を探すときは、年・組・役名を一緒に確かめると選びやすくなります。『銀ちゃんの恋』も『激情』も再演を重ねた作品ですから、タイトルを見つけただけで注文せず、出演者まで読んでおきましょう。

役から気になったら、星空さん自身の言葉にも
舞台での役に興味が湧いたら、本人が出演歴を振り返る番組も手がかりになります。スカイ・ステージの「スター・ロングインタビュー#84」は、星空さんを取り上げた回です。
公式番組紹介では、初舞台から『PRINCE OF ROSES』、『銀ちゃんの恋』、『冬霞の巴里』などの歩みが案内されています。今回の三作品を並べたあとに読むと、名前だけでは分かりにくかった公演歴が、具体的な役と結びつきます。放送や視聴の予定は、番組ページの現在の案内で確認してください。
ここで一つ、分けておきたいことがあります。小夏やアンブル、カルメンの性格は、星空さん本人の性格ではありません。役の生き方が違うからこそ、同じ人の出演作をたどる面白さがあります。
今の『エリザベート』から星空さんを知った方も、過去へ戻ると、皇妃とは別の暮らしや恋や家族の中にいる役に出会えます。「次はこの女性の話を観たい」。そんな選び方で、星空さんの舞台をもう一本広げてみてはいかがでしょう。

