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宝塚『アナスタシア』はなぜディミトリが主役?2020年宙組の新曲と、冬から春へ向かう旅

冬の街から春のパリへ向かう二人を描いた旅のイメージ 宝塚
イラスト:当サイト制作。人物・衣装・風景・楽譜は説明用のイメージで、出演者や実際の舞台の再現ではありません。参考:https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2020/anastasia/info.html

題名は『アナスタシア』なのに、宝塚版の主役はディミトリ。映画や別の舞台版から興味を持った方は、まずここが気になるかもしれません。

2020年宙組版では、真風涼帆さんが演じるディミトリのために新曲が書き下ろされ、プロローグなども加えられました。アーニャの身元を探すだけでなく、彼も出会いを通して変わっていく。その歩みへ近づけるようにした宝塚版の工夫です。

この記事で分かること

ディミトリを主役にするための新曲と場面の追加/アーニャとグレブの関係/演出家が語った冬のロシアと春のパリの色の違い。

詐欺師の青年と、記憶を失った少女がパリを目指す

記憶をなくした少女アーニャは、皇女アナスタシアによく似た人物。彼女を星風まどかさん、詐欺師の青年ディミトリを真風涼帆さんが演じます。

公式の英語版あらすじでは、ディミトリと仲間のヴラドが、皇女を見つけた人への報奨金を目当てに、偽のアナスタシアを仕立てようとするところから説明されています。ディミトリは、最初から無欲の案内人として現れる人ではありません。

一緒にパリへ向かうディミトリとアーニャ、彼女を追うグレブの人物関係
イラスト:当サイト制作。参考:公式の作品・制作解説。人物・衣装・風景・楽譜は説明用のイメージで、出演者や実際の舞台の再現ではありません。

アーニャを追うグレブは、ただの恋のライバルではない

芹香斗亜さんが演じるグレブ・ヴァガノフは軍人です。演出の稲葉太地さんは、アーニャを追い込む人物として彼を紹介し、主役二人に対する敵役としての葛藤にも触れています。

ディミトリとアーニャが一緒に旅をする一方で、グレブはアーニャを追う。恋の行方だけでなく、グレブが二人を追う理由にも目を向けてみてください。

2020年宙組の三人の配役
役名2020年宙組の配役物語の入口
ディミトリ真風涼帆アーニャと旅をする青年
アーニャ星風まどか記憶を失った少女
グレブ・ヴァガノフ芹香斗亜アーニャを追う軍人

表は左右にスクロールできます。

ヴラド・ポポフを演じるのは桜木みなとさん、リリーは和希そらさん。気になった歌や場面から配役を調べるときは、この二人の名前も探してみてください。

宝塚の解説アイコン当サイト制作
私は最初に三人だけ、役名と顔ぶれを結んでおきたいです。ディミトリは旅の相手、グレブは追ってくる人。この違いが分かると、アーニャが誰と話しているのかを追いやすくなりますね。

ディミトリを主役にするため、新曲が生まれました

宝塚歌劇の作品紹介には、ブロードウェイのクリエイティブスタッフから、ディミトリ役に新たな楽曲が提供されたことが記載されています。

稲葉さんは三井住友カードの公式インタビューで、オリジナルスタッフと相談してプロローグなどを加え、新曲を書き下ろしてもらったと説明しています。既存の作品をばらばらにするのではなく、ディミトリが中心になる場面を挿入する考えでした。

宝塚版で追加されたディミトリの新曲を紹介する人物イラスト
イラスト:当サイト制作。参考:公式の作品・制作解説。人物・衣装・風景・楽譜は説明用のイメージで、出演者や実際の舞台の再現ではありません。

最初から立派な青年にしなかったのは、変化を見せるため

稲葉さんが真風さんに頼んだのは、一幕のディミトリを悪く作ってほしいということ。裏社会で盗みなどをして生きる出発点があるからこそ、アーニャとの出会いのあとに変わっていく面白さが出る、と語っています。

主役だから最初から理想的な人、ではないのですね。彼がどんな目的でアーニャと関わり始めたのかを覚えておくと、後の言葉や選択がどう変わるかにも目が向きます。

稲葉さんが見せたいとしたのは、ディミトリとアーニャの成長、そして二人が最後に何を手に入れるか。題名の人物が誰なのかという疑問に加えて、旅が二人に何をもたらすかも、宝塚版を楽しむ入口になります。

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私なら、ディミトリの第一印象だけで好き嫌いを決めずに見てみたいです。最初に欲しかったものと、旅のあとで大切にするものが同じなのか。そこが気になります。

冬のロシアと春のパリ。色も一緒に旅をします

人物の台詞だけでなく、画面全体の色を見る楽しみもあります。稲葉さんは、ロシア革命後の冬の街を、茶色、グレー、黒などの重い色で、二幕の春のパリを華やかなパステルカラーで表したいと説明しています。

演出家が語った冬のロシアの重い色と春のパリのパステルカラーの違い
イラスト:当サイト制作。参考:公式の作品・制作解説。人物・衣装・風景・楽譜は説明用のイメージで、出演者や実際の舞台の再現ではありません。

映像を見るときは、人物の周りの色にも目を向けて

たとえば、最初は衣装だけを見ていた方も、人物の背後にどんな色が広がるかまで眺めてみませんか。暗い色が多い街から淡い色の街へ移ると、同じ二人でも周囲の印象が変わります。

これは演出家が公表した色の方針を楽しむ提案です。掲載イラストはその違いを説明するために描いたもので、実際の舞台装置や衣装を再現した絵ではありません。

稲葉さんはロシアを訪ねた際の街の大きさや色の実感にも触れています。人物の物語を追うだけでなく、二つの街をどう見せようとしたかを知ると、背景や舞台全体を眺める楽しみも増えますね。

映画と舞台、宝塚版の人物を混ぜずに楽しみたい

このミュージカルは、1997年公開のアニメーション映画に着想を得た作品です。2017年にブロードウェイで初演され、日本では2020年春の公演を経て、宙組版が登場しました。

脚本はテレンス・マクナリー、音楽はスティーヴン・フラハーティ、歌詞はリン・アレンズ。宝塚版の潤色・演出は稲葉太地さんです。同じ題名でも、公演や版によって出演者や作りが異なります。

注意

宝塚版の新曲や追加場面を知りたい場合は、2020年宙組版の資料を確かめてください。映画と同じ場面・同じ曲順の作品として扱うことはできません。

皇女が生き延びたという「伝説」をもとにした物語です

公式作品紹介では、ロシア革命で殺害された皇帝一家の末娘アナスタシアが生きていたという伝説をもとにした作品と説明されています。アーニャの物語は、現実の皇女生存を証明するものではありません。

史実をそのまま上演した記録ではなく、伝説から生まれた愛と冒険の物語として楽しみましょう。ここでは結末の答え合わせより、二人が出会って変わるところを紹介しています。

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私はアーニャの正体だけを急いで確かめるより、ディミトリの歌と二つの街の色を一緒に楽しみたいです。見終わってから冒頭を振り返ると、最初とは違って感じる言葉があるかもしれませんね。

英語版PDFのリンクが開けない場合は、上記の日本語作品紹介と演出家インタビューもご覧ください。

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