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ダッジ・バイパー2015年型は、645馬力だけじゃない!GT・GTSの6速と手仕事に注目

赤い第五世代ダッジ・バイパーを描いたオリジナルイラスト 車

バイパーと聞くと、大きなV10と、長いボンネットを思い浮かべませんか? 2015年型も、その期待を裏切らない8.4Lのエンジンを積んでいます。

でも、645馬力という数字だけで選ぼうとすると、この年式のおもしろい違いを見落としてしまいます。ベース車とGT、GTSは同じ最高出力なのに、6速のギア比や足回り、シートの仕様が違うんです。

今回は北米向け2015年型のクーペを取り上げます。「どれがいちばん強いか」より、「同じエンジンを、どんな時間に使う車なのか」という目線で見てみましょう。

ここから始めよう:2015年型は最高出力だけでグレードを見分けられません。6速の変速比、ダンパーの調整、内装の標準装備まで見ると、GTとGTSの狙いがわかります。

まずは2015年型に絞ろう!「バイパーなら同じ」は危ない

今回見るのは、第五世代にあたる2015年型。メーカーの北米向け仕様書では、ベースのViper、GT、GTSを区別して掲載しています。2015年型は2014年後半からの供給が案内されており、カレンダーの年とモデル年は同じとは限りません。

中古車の紹介で「2015年登録」と書かれていても、それだけでここに載せた装備と一致するとは判断できません。モデル年とグレード、販売地域を先に確かめるのが、仕様を調べる近道です。

基本構成は、縦置きの自然吸気V10、後輪駆動、6速マニュアル。自然吸気はターボなどで空気を押し込まず、エンジン自身の吸い込みで吸気する方式です。大きな排気量を主役にした構成が残っています。

最高出力は645bhpで、米国式の馬力表記です。メーカー併記の単位では481kW、発生回転数は6,200rpm。最大トルクは600lb-ft、814Nmで5,000rpm時とされます。日本でよく使うPSと、数字をそのまま同一視しないようにしましょう。

GTやGTSの名前が豪華になっても、この出力とトルクは共通です。上位車だからエンジンも強いはず、と考えると選択の理由がずれてしまう年式なんですね。

カーボンの下には鉄もある!素材の使い分けがおもしろい

2015年型の車体は、鋼製のスペースフレームを骨格に使っています。スペースフレームは、複数の部材を組んで車体を支える構造。カーボンの外板があることと、骨格までカーボンであることは別の話です。

ボンネット、ルーフ、後ろのリフトゲートにはカーボンファイバーが使われています。一方、ドアとサイドシルの外板はアルミニウム、カウル部分はマグネシウム。車を一つの素材で説明するより、場所ごとの役割を追うほうが正確です。

ここでいうサイドシルは、ドアの下に沿う部分。リフトゲートは後ろ側の開閉部です。部品の名前を分けて読むと、「カーボンのボディ」という短い紹介から、もう一歩中身に入れます。

メーカーの製造紹介では、ボンネットなどのカーボン部品は手作業で積層すると説明されています。炭素繊維を重ねる工程と、車体を支える鋼の骨格は、同じ車の中で共存しているわけです。

私はこの組み合わせが気になります。見た目は大胆なスーパーカーでも、素材は一色ではない。必要な場所に違う素材を持ち込むという、かなり具体的なものづくりの話が見えてきます。

骨格と外板は別の素材。カーボンだけでできた車ではありません。
骨格と外板は別の素材。カーボンだけでできた車ではありません。

塗装に最大160人時!それは「工場にいる時間」とは違う

バイパーはデトロイトのコナー・アベニュー工場で、専門の作業者によって手作業を重ねて造られました。メーカーが2015年1月に紹介した製造の話には、研磨、塗装、仕上げにも人の手をかける様子が記されています。

外装の仕上げには、最大で160人時を費やすとされています。人時は、人数と作業時間を掛け合わせた工数です。1人が10時間なら10人時、2人が5時間ずつ作業しても10人時になります。

つまり、この数字を「1台が160時間ずっと塗装室に置かれる」と読み替えることはできません。車全体の組み立て時間でもありません。どの工程の、どんな単位なのかを読むと、手仕事の多さを誇張せずに受け取れます。

選択できるストライプにも手塗りの工程があると紹介されています。写真では一本の模様に見えても、実際には表面を整え、色を載せ、仕上げる作業が必要です。エンジンの数字とは別のところにも、この車に人が関わる時間があるんですね。

同じ製造紹介には、各車体が動的な試験を受けることも出てきます。「手作り」という言葉だけで雰囲気を語るより、外板の積層、外装の仕上げ、試験と工程を分けると、少量生産の中身がぐっと具体的になります。

同じ645馬力なのに、GTとGTSの6速は違う!

一番おもしろい差は、普段なら見逃しそうな変速比にありました。2015年型の6速は、ベース車が0.63、GTとGTSが0.50。最終減速比は、いずれも3.55です。

変速比は、入力側と出力側の回転の比率です。同じ速度で同じタイヤを使うなら、6速の数値が小さいほうが、エンジンを低い回転数で回せます。GTとGTSは、6速をさらに巡航寄りにしていると読めます。

比率だけを計算すると、0.50÷0.63は約0.794。ほかの条件をそろえた場合、GTとGTSの6速での回転数は、ベース車より約21%低い計算です。

これは変速比からの比較で、実際の燃費が21%よくなるという意味ではありません。坂道や加速で何速を使うか、速度、負荷によって結果は変わります。ギアの数字からわかることと、走って測らなければわからないことを分けたいところです。

メーカーの2015年型紹介では、GTとGTSの6速変更について、高速走行時のエンジン音を低減する狙いが説明されています。最高出力を増やすためではなく、移動している時間を整える変更だったんですね。

低い回転数で巡航する設定は、いつでも加速が鋭くなる設定とは違います。追い越しなどで必要なら低いギアを選ぶ。6速だけの数値を見て、車全体の速さや運転のしやすさまで順位を付けるのは早計です。

同じ速度・タイヤ・最終減速比なら、6速の比率でエンジン回転数が変わります。
同じ速度・タイヤ・最終減速比なら、6速の比率でエンジン回転数が変わります。
おまめさん
私のひとこと

私なら、645馬力の横に「6速0.50」と書き留めます。大きなV10をどう使わせたいのか、その小さな数字にGTの性格が出ている気がします。

GTは真ん中のグレード。でも、ただの中間ではない

2015年型で加わったGTは、ベース車とGTSの間に位置するグレードです。メーカーの紹介は、GTSで使われる調整式の足回りや、内装の違いをGTにも持たせた点に触れています。

ベース車のダンパーは固定式。GTとGTSには、Bilstein DampTronicの2モード式が用意されます。ダンパーは、サスペンションの動きを収めるための部品。切り替えられることと、必ず快適に感じることは同じではありませんが、選べる設定が増えるのは事実です。

横滑り防止装置のESCにも差があります。米国向け装備表ではベース車が3モード、GTとGTSが5モード。GTとGTSにはSport、Trackの設定が加わります。

モードが多いほど安全という順位ではありません。運転状況に合わせて制御の設定を変えるための違いです。公道とサーキットでは条件が違うので、名前だけを見て制御を弱める使い方は勧められません。

シートも見分けどころです。米国向けの表では、ベース車はバリスティック素材のSabeltシート、GTはナッパレザーにアルカンターラのインサート、GTSはラグナレザーを標準としています。高い出力の共通点より、体が触れる部分の違いを先に比べると選び方が具体的になります。

北米2015年型ベースViperGTGTS
最高出力645bhp645bhp645bhp
6速の変速比0.630.500.50
ダンパー固定式2モード式2モード式
ESCのモード数355
標準シート素材〈米国〉バリスティックナッパ+アルカンターララグナレザー

「何も付いていない車」と思ったら、装備表を見てみよう

バイパーの強烈なイメージから、快適装備まで一切ない車を想像する人もいるかもしれません。ところが、2015年型の米国向け装備表では、エアコン、パワーウインドウ、リアビューカメラはいずれも標準装備です。

もちろん、装備があるだけで日常の使いやすさが決まるわけではありません。長いボンネット、車幅、座る位置なども関わります。それでも「バイパーだから付いていない」と決めつけるより、まずその年の表を見たほうが話が早いですね。

サイズも見ておくと、写真の印象を補えます。北米仕様書の全長は4,463mm、全幅は1,941mm、全高は1,246mm。幅に対してかなり低い車体です。駐車場所を考えるなら、長さだけでなく横の余裕も確かめたくなります。

英語の装備表を読むときは、凡例のS、O、Pに注目しましょう。Sは標準、Oは選択装備、Pはパッケージで設定、ダッシュは設定なし。名前が載っているだけで標準と判断すると、実車との食い違いが起きます。

例えば内装のカーボン仕上げは、GTとGTSで選べる装備として記載されています。先ほどのカーボン製ボンネットとは別です。骨格や外板の素材と、室内の化粧部品を同じ「カーボン」でまとめないのも、装備表を楽しむコツです。

装備表のS・O・P・ダッシュを読み分けると、標準装備の思い込みを防げます。
装備表のS・O・P・ダッシュを読み分けると、標準装備の思い込みを防げます。

TA 2.0まで見ると、選び方は「高い順」ではなくなる

2015年型には、サーキット走行を意識したTA 2.0のパッケージもあります。専用の足回りや空力部品などを持たせる方向で、GTの巡航時の工夫とは、着目する時間が違います。

ここで2016年型ACRの情報を混ぜると、話がややこしくなります。名前が似た高性能版を一緒に比べる前に、年式とパッケージを分けておきましょう。「Viperの最上級は何か」という問いだけでは、この違いをうまく拾えません。

2015年型を調べるなら、まずモデル年と販売地域、次にGT・GTSなどのグレード、そのうえで追加パッケージを見る。この順にすると、標準の足回りと選択装備を混同しにくくなります。

私が今回いちばんおもしろかったのは、同じV10を積みながら、6速やシートにまで性格の違いがあることでした。馬力を入口にするのは楽しい。でも、その数字が同じところから比べ始めると、バイパーの別の顔が見えてきます。

もっと知りたいときは、公式情報をどうぞ

メーカー米国向け2015年型仕様書〈変速比・構造〉

メーカー米国向け2015年型装備表〈凡例・標準装備〉

メーカー2015年型概要〈GTの狙い・北米仕様〉

Stellantis北米公式ブログ〈2015年1月9日・製造工程〉

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