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ルノー5ターボは、なぜ後席をエンジンに変えた?ターボ2の「安くする工夫」まで追ってみよう

青いルノー5ターボと製造拠点をイメージしたオリジナルイラスト 車

小さなルノー5に、ぐっと張り出した後ろのフェンダー。この姿を見ると、大きなターボを載せた特別仕様かな、と思いませんか?

実はルノー5ターボの面白さは、馬力より先にエンジンの場所にあります。後席をなくしてエンジンを置き、駆動する車輪まで変えたのです。

さらに後継のターボ2では、速さを盛る方向とは違う工夫が加わります。競技に向かうマキシ5ターボ、名前の似た5 GTターボと分けて読むと、「5」の歴史がずっとわかりやすくなります。

ここから始めよう:後席・生産工程・モデル名の三つに注目すると、ターボの特別さが見えてきます。

後席がエンジンの場所に!小さな車の大きな転換

通常のルノー5は、1972年に登場した前輪駆動の小型車です。前にあるエンジンの力で前輪を回す構造は、限られた大きさで人や荷物を運ぶ日常の車に向いています。

一方、1980年に発売されたルノー5ターボは、後席の位置へエンジンを移した2人乗り。エンジンは車体の中央寄り、後輪の前にあり、駆動方式は後輪駆動です。一般にこの配置をミッドシップと呼びます。

つまり「普通の5のエンジンにターボを追加」しただけではありません。誰を何人乗せるか、どの車輪で路面に力を伝えるかという、車の成り立ちから違います。

前輪駆動では前輪が操舵と駆動を受け持ちます。後輪駆動では、その役割を前後に分けられます。ただしミッドシップなら必ず扱いやすい、という話ではありません。タイヤ、足回り、重量配分がそろって、車の動きが決まります。

写真で見るときは、リアフェンダーだけでなく横の開口部にも注目してみてください。後ろへ移ったエンジンに空気を届けるための場所、と考えると、張り出した姿が飾り以上のものに見えてきます。

後席をなくした理由は、エンジンと駆動輪の配置を見るとわかる
後席をなくした理由は、エンジンと駆動輪の配置を見るとわかる

160馬力だけでは伝わらない、1.4リッターの挑戦

初期の市販モデルR8220は、1,397ccの直列4気筒ターボで、公式資料の最高出力は160ch/6,000rpm。5速マニュアルと後輪駆動を組み合わせています。

chはフランスの資料で使われる馬力の単位です。英米のhpと同じ数字として細かな比較をせず、ここでは資料の表記を残します。競技車の350hpと並べるときも、市販車か競技車かを先に分ける必要があります。

ターボとは、排気のエネルギーでタービンを回し、エンジンへ送り込む空気を増やす仕組み。排気量を大きくする以外にも出力を高める方法がある、ということですね。

ただ、空気が増えれば、それに見合う燃料と熱への対策も必要になります。エンジンを移して終わりではなく、吸気、冷却、排気を車体の中で成立させなければなりません。小さな車に強いエンジンを載せる難しさは、この周辺にもあります。

ターボの企画が動いたのは1976年。1978年のパリでは試作の姿を披露し、1980年に市販へ進みました。数年かけて競技の構想を売れる車に落とし込んだ、と読むと、急に生まれた奇抜なモデルではないとわかります。

一つの工場では完成しない。三つの拠点を通った理由

公式博物館の説明では、5ターボの製造には三つの拠点が関わります。フラン工場でボディをつくり、ユーリエのセリゼ工場でターボ用に加工。その後、アルピーヌのディエップ工場で塗装と最終組み立てを行いました。

この流れを頭に置くと、量産小型車の姿と特別な構造が同居する理由がつながります。ルノー5のボディを出発点にしても、後席へエンジンを置くためには、通常の完成車と同じ工程だけでは足りないのです。

ベースを一から別の姿にせず、専用の加工と組み立てを足す。その方法は、既存の生産設備と専門拠点を組み合わせる発想でもあります。見た目は一台の小型車でも、工場の側から見ると手渡しの多い特別な製品でした。

アルピーヌは完成車の名前として知られますが、ここでは製造の受け皿でもありました。5ターボをルノーとアルピーヌの関係から眺めると、エンブレムだけではわからない仕事のつながりが見つかります。

一台の完成まで、ボディは三つの拠点を通る
一台の完成まで、ボディは三つの拠点を通る

ターボ2はパワーアップ版?むしろ「続けて売る工夫」が面白い

1982年のパリ・モーターショーで披露されたターボ2は、1983年モデルとして登場します。「2」と聞くと、もっと強いエンジンや二つのターボを想像しそうですが、この名称はそういう意味ではありません。

ターボ2で注目したいのは仕様の簡素化です。初期型の個性的なベルトーネの内装に代えて、アルピーヌ・ターボ系のシートや内装を利用。エンジンを後ろへ置く基本構造は引き継ぎました。

公式の歴史資料には、フランスでの価格が従来の115,000フランから102,000フランへ下がったと記されています。これは当時のフランスの価格で、日本の販売価格や現在の中古相場ではありません。

13,000フランの差は、従来価格に対して約11.3%。単に豪華さを減らした、と片づけるより、特殊な構造を残して価格を下げた点に注目すると、ターボ2の立場が見えてきます。

ここで気をつけたいのが、アルミ製ドアから鋼製ドアへの変更時期。公式資料では1982年モデルですでに鋼製になっています。初期型とターボ2の差を説明するとき、途中の変更をすべてターボ2の登場時にまとめると、年式の違いが消えてしまいます。

「ターボ2だからこの装備」「初期型だから必ずこの素材」と名前だけで決めず、製造年と個体の資料を合わせたいところです。長く生産された車では、モデル名の境目と部品変更の境目が重ならないことがあります。

おまめさん
私のひとこと

私は、ターボ2の値下げの話が好きです。変わった構造をあきらめずに、続けて売る方法を考えた。その工夫を知ると、初期型とは別の魅力が見えてきます。

ラリーに向かった「マキシ」は、市販ターボ2と分けて見よう

5ターボの競技仕様は、セヴェンヌ、ツール・ド・コルスを経て、マキシ5ターボへ進みます。グループ4からグループBへの規則の変化も、この流れに関わっています。

グループとは当時の競技車両の区分で、出場に必要な生産や改造の条件が定められていました。車が速くなる背景にはエンジンの進歩だけでなく、どんな車として参加できるか、というルールがあります。

初期5ターボの認証に関わる400台という数字も、その条件として読むものです。5ターボ全体が400台だけつくられた、と受け取ってはいけません。規則で必要な台数と、実際の総生産台数は別です。

マキシでは四輪駆動に移る代わりに、二輪駆動のまま性能を高める道を選びました。公式博物館の仕様は1,527cc・350hpで、空力とサスペンションにも改良が加わっています。

出力だけでなく、空気の流れと路面への力の伝え方も変える。タイヤを回す力が大きくなっても、車体を安定させたりタイヤを接地させたりする条件が追いつかなければ、競技では生かしきれません。

そのため、350hpを市販ターボ2の標準性能として紹介するのは誤りです。展示のキャプションや動画を見るときも、5ターボ、ターボ2、マキシのどれを指しているかを確かめるだけで、数字の混乱がかなり減ります。

ターボ2、マキシ、GTターボは同じ進化ではない
ターボ2、マキシ、GTターボは同じ進化ではない

名前が似ているGTターボは、別の家系です

1985年の5 GTターボは、1984年に登場したシュペール5をベースにしています。5ターボの名前にGTを足した車でも、マキシの市販版でもありません。

ルノーの紹介では、GTターボは1,397ccで当初115bhp、その後120bhpへ。排気量が5ターボと同じでも、ベースの車と構造が違えば、同じモデルとはいえません。

車名を調べる際は、ターボという単語より、登場年とベース車を先に見るのがおすすめです。中古車の説明、写真集、模型の商品名でも、この二つを合わせると別モデルを取り違えにくくなります。

モデル見るポイント混同しないこと
5ターボ1980年登場・後部中央エンジン通常の5の過給版だけではない
ターボ21983年モデル・仕様簡素化2はターボの数ではない
マキシ5ターボ競技用・350hpの仕様市販ターボ2の標準出力ではない
5 GTターボ1985年登場・シュペール5ベース5ターボの後継名ではない

公式映像を見るなら、後ろ半分をよく見てみよう!

ルノー・フランスの公式映像では、5ターボの独特な姿を楽しめます。見るときは、前からの顔だけでなく、側面から後部へ目を移してみてください。

後ろの張り出し、開口部、短い車体の中に収まる機械。配置の図と合わせると、小型車の形を残しながら用途を変えた大胆さが伝わってきます。映像の演出から走行性能を決めつけず、まず形と構造を結びつけて眺めると面白いですよ。

写真や展示の説明で迷ったら、この順で確かめよう

最初に見るのは車名と年式。次に、市販仕様か競技仕様かを確かめます。競技車の写真に大きな出力が書かれていても、同じ外観の市販車にそのまま当てはめないのがコツです。

続いてエンジンの場所、内装、ボディの素材へ。初期型の特徴を知ることは役立ちますが、長い年月の間に修復や部品交換を受けた個体も考えられます。写真の一部分だけで製造時の仕様を断定せず、個体に付く資料まで見たいですね。

展示なら、説明札の「年」が発売年なのか、その車の製造年なのかにも注目しましょう。公式博物館の5ターボは1981年と表示されていますが、モデルの発売は1980年。二つの年は矛盾せず、違うことを説明しています。

模型や写真集を選ぶときにも、この読み方が使えます。好きな一台を詳しく知るには、出力の大きさで並べるより、どの段階の5ターボを再現しているかを見るほうが役に立ちます。

「速い小型車」で終わらせないと、5ターボはもっと楽しい

5ターボの歴史には、通常の小型車から競技向けの構造へ変える工夫と、その特別な車を生産し続ける工夫の両方があります。

後席の位置、三つの製造拠点、ターボ2の簡素化、マキシの競技用改良。同じ写真を見直すとき、どの工夫を知っているかで気づく場所も変わります。

次に5ターボを見かけたら、「何馬力?」の次に「どの年式で、どの仕様?」も確かめてみませんか。数字の派手さだけでなく、小さな車を成立させた仕事まで楽しめるはずです。

もっと知りたいときは、公式情報をどうぞ

ルノー公式博物館:R5ターボ

ルノー・クラシック:5ターボの歴史資料(PDF)

ルノー公式博物館:マキシ5ターボ

ルノー・グループ:5 GTターボの30周年

ルノー・グループ:通常のルノー5の歴史

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