初代NSXのエンジンと聞けば、まずVTECを思い浮かべる方も多いでしょう。でも、1990年に登場した3リッターV6には、空気を取り込む側にも面白い仕掛けがあります。「共鳴チャンバー容量切換えインテークマニホールド」です。
長い名前ですが、要点は二つ。VTECはエンジンのバルブの動きを切り換え、共鳴チャンバーは吸気側の空間を切り換えます。 同じ部品の別名ではありません。Hondaの1990年資料を読みながら、空気がシリンダーに入るまでをたどってみましょう。

VTECが変えるのはバルブの開き方
エンジンは吸気バルブを開いて空気を取り込み、燃焼後には排気バルブを開いてガスを外に出します。バルブを押すのは、回転するカムと、それに動かされるロッカーアームです。
低い回転数で扱いやすくする開き方と、高い回転数でたくさん吸排気する開き方は同じではありません。初代NSXのVTECは、異なる形のカムを用意し、油圧ピストンでロッカーアームを連結して、バルブの開く時期や開く量を切り換えます。
Hondaは切り換え制御について、回転数だけでなくエンジン負荷や車速なども検出すると説明しています。「ある回転数を超えれば必ず同じ瞬間に切り換わる」と単純化しないほうがよさそうです。
共鳴チャンバーは、どこを変える?
今度は吸気バルブの手前に目を向けます。エンジンが空気を吸うと、吸気通路の中では圧力の波が生まれます。Hondaは、一つ前の気筒の吸気で生まれた圧力波を、次の気筒へ空気を送り込む助けに使う考え方を説明しています。
初代NSXのV6は前後二つのバンクに、それぞれ3気筒ずつ配置されています。低・中回転域では、吸気マニホールド内のシャッターバルブを閉じ、バンクごとにチャンバーを分けます。Hondaがいう「共鳴効果」を使いやすくするためです。

約4,800回転で何が起きる?
Hondaの資料では、約4,800回転からチャンバー内のシャッターを開くと説明しています。ECUが回転数を検知してシャッターに指令を出し、吸気側の容量を変えます。高速域では、流れる空気の勢いを利用する「慣性効果」を働かせ、出力向上につなげる仕組みです。
ここでいう4,800回転前後は吸気チャンバーの説明に出てくる数値です。VTECの切り換え回転数と同じものとして読まないでください。
二つの仕組みはどう協力する?
共鳴チャンバーは、吸気バルブに届く前の空気の状態を整えます。VTECは、気筒の入口と出口をいつ、どれだけ開くかを切り換えます。Hondaはこの二つを組み合わせ、低・中回転のトルクと高回転での出力の両立を目指しました。
なお、発売時の「280馬力」は5速MT車の数値です。ここで扱ったのは1990年登場時の3.0L仕様。後年の3.2L車や、後に登場した別世代NSXのツインターボまで、同じ構造と考えないでください。


