R34型スカイラインGT-Rの装備表を見ると、「ヘリカルLSD」と「アクティブLSD」という言葉が出てきます。さらに4WDの「アテーサE-TS」も並ぶので、何がどこを調整しているのか混乱しがちです。
1999年の発売時、日産は標準車にヘリカルLSD、V・specにアクティブLSDを採用したと説明しています。ここで見たいのは、後輪の左右をつなぐ差動装置の話。一方、アテーサE-TSは前後の駆動力配分を扱う4WDシステムです。
先に「前後」と「左右」を分けよう
アテーサは前輪へも力を送るための仕組み
R34 GT-Rは4輪駆動です。日産はアテーサE-TSを電子制御トルクスプリット4WDと呼び、車両の状態に応じて前後の駆動力配分を変える技術として説明しています。
車体を上から見たときに、前のタイヤと後ろのタイヤを見比べる。それが前後配分を考える入口です。四つのタイヤにいつも同じ力が伝わる、と決めつけるものではありません。

LSDは左右の回転差を扱う
車が曲がるとき、外側の車輪は内側より長い距離を通ります。同じ時間で走るなら、外側の車輪は内側より多く回る必要があります。この回転差を許しながら、エンジンの力を左右へ伝えるのがデファレンシャル、略してデフです。
LSDはリミテッド・スリップ・デフの略で、左右の差を無条件にゼロにする装置ではありません。差が大きくなりすぎる状態を抑え、力を路面へ伝えるのを助けるものです。
前後輪の配分と、後輪の左右差は別の話。同じ四輪駆動車でも、それぞれ違う場所を見ています。
なぜ左右の差を制限するの?
曲がるための差は必要。でも差が大きすぎると困る
一般的なオープンデフは、左右に回転差を許します。路面の状態が左右で異なり、片方が空転しやすい状況では、そのままでは反対側に十分な力を伝えにくい場合があります。
たとえばカーブの内側のタイヤが軽くなって滑りやすいとき。左右の差を適切に制限できれば、外側のタイヤにも駆動力を伝える助けになります。日産の1999年の別のスカイライン発表資料は、ヘリカルLSDについて、旋回時に内輪が滑った場合でも外輪側へ駆動力を伝える差動制限装置と説明しています。

ただし、LSDがあってもタイヤの接地力を超えられるわけではありません。路面・タイヤ・荷重などにより結果は変わり、どの状況でも必ず前へ進める装置ではありません。
標準車のヘリカルとV・specのアクティブ
名前の違いが意味するもの
日産の発売時資料では、標準車のヘリカルLSDはレスポンスとコントロール性に優れ、旋回時のトラクションとアクセルへの応答性を高めると説明されています。ヘリカルは、はすば歯車を使う方式の名前。別のスカイラインの資料では、歯車によって差動制限トルクを発生させると説明されています。
V・specにはアクティブLSDが採用されています。「標準車はLSDがない」のではありません。どちらも左右の回転差を扱いますが、採用した方式が違うのです。

ここで使った発売資料は、V・specのアクティブLSDの細かい油圧回路や、条件ごとの制御量までは詳述していません。「常に何パーセント固定する」といった数値は、この資料から読み取れません。両者の違いを細部まで知りたいときは、年式に合う整備書などで確認したい部分です。
| 標準車 | ヘリカルLSD | 後輪左右の差を扱う |
|---|---|---|
| V・spec | アクティブLSD | 後輪左右の差を扱う |
| アテーサE-TS | 電子制御トルクスプリット4WD | 前後の駆動力配分を扱う |
GT-R以外のR34スカイラインとも混ぜない
1999年8月、日産はR34スカイラインの一部の2.5リッターターボ・5MT車にも、ヘリカルLSDを標準装備したと発表しています。「R34にヘリカルLSD」と書いてあっても、GT-Rだけの話とは限りません。
ボディが似ていてもエンジンや駆動方式、装備はグレードで異なります。資料を読む際は、まずGT-Rかどうか、続いて標準車かV・specか、発売時期はいつかを確認してください。

グレード名は見た目の違いを探す手掛かりにもなりますが、装備を調べるときはその年の資料を隣に置きたいですね。
SUPER HICASとは、さらに別の仕事
発売資料に載るSUPER HICASは、後輪の舵角を制御する仕組みです。後輪がどちらへ向くかを扱うので、後輪左右の回転差を扱うLSDとは役割が異なります。
前後にどれだけ駆動力を送るか、左右の回転差をどう扱うか、後輪がどちらへ向くか。三つを分けると、技術名を暗記するよりR34の動きを想像しやすくなります。
年数の経った車では、後から部品が交換されている場合もあります。発売時の資料と現在の個体の状態は分けて確認しましょう。



「前か後ろか」で迷ったら、まず前後のタイヤを指で追う。次に後ろの左右を見比べる。この順番だと装備表の言葉を整理しやすいですね。