小さなボディに大きく張り出したフェンダー。シティ ターボIIの写真を見ると、まず目を奪われるのはその姿かもしれません。でも、1982年のシティターボと見比べると、ボンネットの下にも大きな違いがあります。
1983年のターボIIには、ターボで圧縮された空気を冷やすインタークーラーが加わりました。排気量は同じ1,231cc。最高出力は100馬力から110馬力へ。どうして冷やすことが出力につながるのでしょうか。
- ターボIIは過給した空気を空冷式インタークーラーで冷やす。
- 1982年型ターボと1983年型ターボIIは同じ排気量でも、出力・車幅・タイヤが違う。
- スクランブルブーストは常に作動する仕組みではなく、回転数と操作に条件がある。
シティ ターボとターボII、どこが違う?
まずは発売時の国内向け仕様を並べてみましょう。初代シティのターボは1982年9月発売、ターボIIは翌1983年11月発売です。どちらも前輪駆動で、1,231ccのER型エンジンと5速マニュアルを搭載しました。
| 項目 | 1982年 シティターボ | 1983年 ターボII |
|---|---|---|
| 最高出力 | 100PS/5,500rpm | 110PS/5,500rpm |
| 最大トルク | 15.0kg-m/3,000rpm | 16.3kg-m/3,000rpm |
| 全幅 | 1,570mm | 1,625mm |
| 前トレッド | 1,370mm | 1,400mm |
| 標準車両重量 | 690kg | 735kg |
| タイヤ | 165/70HR12 | 185/60R13 80H |
同じ車名の「ターボ」でも、数字を並べると車幅は55mm、前の左右タイヤ間隔を示すトレッドは30mm広がっています。ターボIIの膨らんだフェンダーは、見た目だけを比べるより足まわりの寸法と一緒に見ると、変化をつかみやすくなります。
車両重量は発売時諸元の標準値です。ターボIIのサンルーフ仕様は745kgと別に記載されています。年月を経た実車は装備や改造でも変わるため、表の値をそのまま目の前の車の実測値とは考えないでください。

ターボはどうやって空気を押し込む?
エンジンは空気と燃料を燃やし、その力で回ります。自然吸気では、主にピストンの動きによって空気を吸い込みます。一方、ターボは排気の流れでタービンを回し、同じ軸につながったコンプレッサーで吸入空気を圧縮します。
つまり排気側と吸気側は、空気が混ざるのではなく、回転する軸を介してつながっています。圧縮した空気を送り込めば、同じ排気量でもより多くの空気をシリンダーに入れる助けになります。
ただし、空気を圧縮すると温度が上がります。温かい空気は同じ圧力なら密度が下がるため、圧縮した後で冷やすと、シリンダーへ送る空気の密度を高められます。そこで登場するのがインタークーラーです。
インタークーラーの中で混ざるのは空気と走行風?
混ざるのではありません。過給された吸入空気は熱交換器の内部を通り、走行風は外側のフィンのすき間を通ります。金属を介して熱が移り、吸入空気が冷やされる仕組みです。
Hondaの当時の技術資料は、アルミ製インタークーラーと前面のダクトを使い、吸入空気を45℃冷却すると説明しています。この数字は当時資料の説明で、外気温や速度に関係なく常に45℃下がるという意味ではありません。資料には測定条件が十分に示されていないため、普遍的な値として扱えません。
冷やしているのはエンジン冷却水ではなく、エンジンに入る空気です。 ラジエーターと似たフィンを持っていても、役割が違います。
ターボIIが110馬力になった理由は、冷却だけ?
インタークーラーは大きな変更点ですが、それ一つだけで10馬力増えたと決めつけるのは早いでしょう。HondaはターボIIの開発で、燃焼室形状の改良による耐ノック性の向上、高過給に対応するターボ、電子燃料噴射や過給圧制御も説明しています。
ノッキングは、燃焼室で望ましくない燃焼が起こる現象です。吸入空気の温度が高くなり過ぎると、その発生が問題になります。空気を冷やすことと燃焼室の工夫を組み合わせ、過給を使いやすくする。複数の技術がつながった結果として読みたいところです。
発表資料が挙げる過給圧は、1982年ターボが0.75kg/cm²、1983年ターボIIが0.85kg/cm²です。いずれも当時の資料の表記。計測条件や単位の定義をそろえず、現在の別車種の数値と単純に優劣を比べることはできません。
スクランブルブーストは、いつ働く?
ターボIIには「スクランブルブースト」と呼ばれる過給の制御があります。名前だけを見ると、ずっと過給圧を上げ続ける機能に思えるかもしれません。
Hondaの発売資料では、エンジン回転が4,000rpm以下でスロットルを全開にした場合、過給圧を約10秒間、約10%高めると説明しています。回転数・操作・時間の条件がある、一時的な仕組みです。
この「約10%」は過給圧についての説明であり、車の馬力や加速度が必ず10%増えるという意味ではありません。読んでいる数字が何を表すかを分けると、カタログの表現を取り違えずに済みます。
幅広フェンダーの下はどう変わった?
ターボIIは全幅1,625mm。1982年型ターボの1,570mmと比べると55mm広く、タイヤも12インチから13インチへ変わりました。前輪のブレーキは両車ともベンチレーテッドディスクですから、「IIになって初めて通風式ディスクになった」という違いではありません。
ターボIIの発売資料は、出力を支えるためにサスペンションとワイドトレッドを設計したと説明しています。フェンダー、タイヤ、足まわり、エンジンの数字をまとめて眺めると、一つだけの変更で成立した車ではないことが分かります。
10モード燃費はターボが18.6km/L、ターボIIが17.6km/L。どちらも当時定められた試験条件による値です。今のWLTC燃費や現車の実燃費と、同じ条件の数字として並べることはできません。
中古車や資料を見るとき、どこを確かめる?
「ターボ」と「ターボII」は登場年も装備も異なります。写真のフェンダーだけで判断せず、型式・年式・車検証・車両の状態を合わせて確認しましょう。型式は双方ともE-AAのため、型式だけで仕様を確定できるとは限りません。
40年以上前の車では、部品の交換や改造が行われていることもあります。整備や購入の判断は、当該車両の状態を専門店に確認してください。販売当時の数字は、その車の現在の健康状態を示すものではありません。
同じ1.2Lのエンジンに、冷却と制御の工夫を重ねたターボII。今度ブルドッグの写真を見るときは、張り出したフェンダーだけでなく、その奥で冷やされる空気の道も想像してみてください。


