記事内に広告が含まれています。

CR-Xデルソルの屋根はどこへ消える?トランストップと手でつなぐセンターロック

上昇したトランクリッドへ一枚の屋根をスライドさせるトランストップの概念 車
技術イラスト:当サイト制作(AI使用)。動作の概念図で、内部形状・寸法・リフト構造の実機再現ではありません。参考:Honda 1992年CR-Xデルソル ファクトブックの作動説明・透視図。

屋根より先に、トランクのふたが持ち上がる。1992年のCR-Xデルソルに用意された「トランストップ」は、そんな意外な動きをする電動オープンルーフです。ルーフが何枚にも折り畳まれるわけでも、後ろへ倒れるだけでもありません。

仕組みの中心は、上へ持ち上げたトランクリッドが、屋根を後ろから受け取ること。ただし、すべてをボタンだけで済ませる機構ではなく、人がロックを操作する場面もあります。当時のHondaファクトブックを読みながら、どの部品が何をするのかを順番に見ていきます。

まず、この3点を押さえると分かりやすい

  • ルーフは一枚のまま、上昇したトランクリッドへ引き込まれます。
  • 途中でセンターロックを操作し、ルーフとスライドユニットをつなぎます。
  • 約45秒という当時の作動時間には、手動操作の時間も含まれます。
上昇したトランクリッドへ一枚の屋根をスライドさせるトランストップの概念
技術イラスト:当サイト制作(AI使用)。動作の概念を示す図で、内部形状・寸法・リフト構造の実機再現ではありません。リッド内の文字は収納位置を示します。 画像はタップで拡大できます。参考:Hondaの作動説明・透視図

なぜ、トランクのふたを屋根の高さへ上げるのか

ふつうトランクを開けるときは、中の荷物へ手を伸ばせれば十分です。しかしトランストップでは、トランクリッドが屋根を収納する役目も受け持ちます。リッドとは、ここではトランクのふたのことです。

まずリッドを持ち上げ、屋根の後ろに受け取り口を用意する。そこからスライドユニットを前へ伸ばし、ルーフへ差し込む。接続したあとにユニットが後退すると、ルーフもリッドへ引き込まれる。この順番なら、屋根を人が持ち上げて車の外へ運ぶ作業をせずに済みます。

注目したいのは、ルーフとトランクリッドが別々の部品であることです。大きな一枚の屋根が、そのままトランクのふたになるのではありません。屋根を受け取る側を先に動かし、次に屋根を渡すと考えると、珍しい動きにも筋が通ります。

屋根を折る機構ではない

屋根を小さく畳む方式を思い浮かべると、デルソルの動きは分かりにくくなります。トランストップでは、ルーフを何分割にも折らず、スライドして収納します。観察するときは、屋根に折れ目を探すより、リッドから伸びる部品と、ルーフが後ろへ移るところを見てください。

本文のイラストは、この動作の順番を読み取るための概念図です。実車の寸法や、内部のギヤ・配線まで再現した整備図ではありません。詳しい透視図は、末尾のHonda資料へ進むと確認できます。

4つの段階で見ると、人の操作も見えてくる

Hondaの1992年2月の資料には、オープンにするまでの動作が四段階で示されています。当時の説明での作動条件は、エンジンがかかり、サイドブレーキを引き、リアウインドウを閉めた状態です。

以下は仕組みを理解するための解説です。現在残る個体で操作する場合は、実車の取扱説明書や状態の確認が必要です。動かない機構を無理に動かすための手順としては使わないでください。

1.サイドのロックを外し、リッドを上げる

最初に、室内からルーフ両サイドのロックを解除します。そのあと、メーターバイザー右側の開閉ボタンを押し続けると、先にトランクリッドが上昇します。

「屋根を開けるボタンなのに、先に後ろが動く」のは、ルーフを受け取る場所を準備しているためです。ここで屋根だけを動かしても、まだ収納する相手が所定の位置にいません。動作をばらばらに見るより、受け渡しの準備として読むと理解しやすくなります。

2.屋根の後端が上がり、ユニットとつなぐ

リッドが上がり切ると、ルーフ後端がチルトアップします。チルトアップとは、後ろの端が持ち上がる動きです。そしてリッドから出てきたスライドユニットが、ルーフへ差し込まれます。

ここが、電動という言葉だけでは見落としやすいところです。ルーフ後端のセンターロックを人が操作し、ルーフとスライドユニットを接続します。最初にサイドロックを外すだけで、あとは最後まで自動、という説明では、この大事な工程が抜けてしまいます。

センターロックで屋根とスライドユニットを接続する仕組みの概念
技術イラスト:当サイト制作(AI使用)。接続の考え方を説明する模式図です。ロック部品の実形状・操作方向を示す整備図ではありません。 画像はタップで拡大できます。参考:Hondaのセンターロック操作説明

センターロックは、屋根を受け渡す途中で登場する接続です。「サイドロックを外す」と「センターロックを操作する」は、同じ作業を二度書いているのではありません。場所も、その時点で部品同士がどうつながっているかも違います。

3.再びスイッチを押し、屋根を引き込む

接続のあと、再度スイッチを押すと、スライドユニットがリッド内へ後退し、ルーフが収納されます。ユニットだけが空で戻るのではなく、つないだルーフを受け取って戻るところが肝心です。

この場面を「屋根がトランクへ落ちる」と表現してしまうと、動きが伝わりません。ルーフは、ユニットとつながって後ろへ運ばれます。上へ持ち上げる動きと、前後へスライドする動きを組み合わせているのです。

4.収納後、リッドが下がる

屋根を収めたリッドが、最後に下降します。当時資料では、安全確認のため、閉まり切るまでに2回動きが止まると説明されています。動画で途中停止を見かけても、その様子だけで故障だと決めつけないことが大切です。

もちろん、資料に停止の説明があるからといって、現車で起きるすべての停止が正常とは限りません。仕様としての停止と、年数を経た個体の不具合は、別に確認する必要があります。閉じるときは、基本的に逆の動作になります。

「約45秒」は、電動部分だけの速さではない

Hondaは、閉じた状態からオープンまでの作動時間を約45秒と案内しています。その説明には、マニュアル操作の時間も含めると明記されています。

つまり、モーターだけが何秒回るかを示した数値ではありません。ルーフを外す準備や、途中の接続を含む、開閉全体の目安として読む数値です。他車の電動ルーフと比べるときも、「何の時間を数えているのか」を合わせないと、数字だけの競争になってしまいます。

また、この45秒を、現在の中古車でも必ず再現できる保証として扱うことはできません。1992年当時のメーカー説明と、いま目の前にある個体の状態は分けて読みます。古い資料の面白さは、速いか遅いかだけでなく、どんな操作を機械へ任せ、何を人が行っていたかまで見えるところにあります。

マニュアルトップも、単なる「電動を外した車」ではない

デルソルには、屋根を手で脱着するマニュアル式も用意されていました。ルーフにアルミ素材を使い、外した屋根を収めるためのホルダーをトランク内に設けています。

電動式はユニットが屋根を運び、手動式は人が外してホルダーへ収める。収納まで含めた方法が違います。屋根が開いた外観だけを見ても、どちらかを判断できるとは限りません。中古車の紹介を読むなら、「オープンになる」という説明の先まで見て、どちらの仕様か確認したいところです。

マニュアル式の一枚のルーフを外してトランク内ホルダーへ収める考え方
技術イラスト:当サイト制作(AI使用)。手動脱着と収納の概念図です。実車のホルダー形状・収納角度は再現していません。 画像はタップで拡大できます。参考:Hondaのマニュアル式ルーフ説明

トランストップには、トランク容量140Lという数値も案内されています。これはVDA方式によるHonda測定値です。屋根機構があるから荷室は一切使えない、というわけではありませんが、容量の数字だけで、手持ちの荷物が入るとは判断できません。荷物の形と開口部、収納物の位置は別に確かめる必要があります。

手動式のルーフホルダーも、屋根の置き場所を決めるための装備です。車を外から眺めるだけでは分かりにくい、オープンにしたあとの使い勝手が、当時の資料には載っています。

SiRだけ? VXiにもある? 年月を付けると整理できる

発売時の資料では、SiRに電動仕様車が設定されています。これだけを読むと「VXiはすべてマニュアルトップ」と覚えてしまいそうですが、年内に設定が広がっています。

1992年2月27日発表、3月6日発売のあと、同年9月24日の発表で、9月25日からVXiにもトランストップ仕様車が追加されました。グレード名だけでなく、いつの設定を見ているかが必要です。

1992年の設定を読む目安
時点 トランストップの設定
2月発表・3月発売時 SiRに電動仕様車を設定
9月25日から VXiにもトランストップ仕様車を追加

当時のカタログを集めたり、販売中の車両を調べたりするときは、資料の年月が違えば説明も違うと考えて読むと、食い違いに慌てずに済みます。エンジンの違いと、屋根の開閉方式の違いも、一つの話にまとめないようにしましょう。

屋根を動かす楽しさまで、車の個性になっていた

デルソルは、オープンとクーペを1台で楽しむという考え方で登場しました。速さの数値だけを追うと見落としますが、硬い屋根を閉じた姿から、空が開く姿へ変わるところにも、この車ならではの工夫があります。

さらに、リアウインドウにも電動の開閉機能があり、サイドウインドウと合わせて風の流れを調整できるようにしていました。屋根を開けるか閉めるかだけでなく、窓をどうするかでも楽しみ方を変える。その発想まで読むと、トランストップは目立つ仕掛けだけではなかったと分かります。

リッドを先に上げる。屋根を受け取る部品を伸ばす。人がつなぎ、機械が引き込む。次にデルソルの開閉映像を見るときは、この順番に注目してみてください。大きな動きの中に、屋根を渡すための細かな仕事が見えてきます。

タイトルとURLをコピーしました