『My Last Joke-虚構に生きる-』の配役表を開くと、長い外国の名前がずらり。天飛華音さんのポーは分かるけれど、周りの人は誰なの?「大鴉」まであって、少し戸惑いませんか。
ポーの小説を読んだことがないまま、この星組作品に興味を持った20〜40代の方へ。登場人物を丸暗記する前に、「家族」「作家・編集者」「創作を連想させる役」の三つで整理してみましょう。
舞台の配役は宝塚の公演資料、人物の背景はポー博物館の資料に戻って確かめます。知らない名前が一つ分かるだけで、次に気になる役が見つけやすくなります。
要点
2023年星組『My Last Joke』は、天飛華音がエドガー・アラン・ポーを演じる作品。妻ヴァージニアは詩ちづる、大鴉は鳳真斗愛が担当しています。作家の人生と、残した言葉の両方が入口です。
ポーは、怖い小説を書く人だけではなかった!
エドガー・アラン・ポーは1809年、アメリカのボストンで生まれました。詩や短編小説を書き、雑誌の仕事にも関わった作家です。
『My Last Joke』は、ポーの妻や、人生と作品に関わる作家・編集者との関係を軸にしたバウ・ゴシック・ロマンス。作・演出は竹田悠一郎です。

「ゴシック」という雰囲気から、怪奇物語の登場人物ばかりを想像するかもしれません。けれど公式の作品紹介が扱うのは、作品を生み出した本人の人生です。周囲の人とどんな関係を結ぶのかを、役名から見てみましょう。
推理小説も書いていたと知ると、印象が広がります
ポー博物館は、『モルグ街の殺人』を近代的な探偵小説の先駆けとして紹介し、デュパンという人物がシャーロック・ホームズに影響を与えたことを説明しています。
「ホラーの人」と一言で覚えるより、詩、短編、推理、批評など複数の仕事を持った人と考えるほうが、この舞台の作家・編集者の多さを受け止めやすくなります。
ただし、知っている小説の題名が、そのまま『My Last Joke』の上演場面に出るとは限りません。ここでは作家の背景をつかむために紹介しています。
アランとクレム、家族の名前を二組に分けよう
配役表では、ジョン・アランを希沙薫さん、フランシス・アランを七星美妃さんが担当しています。ポー博物館の伝記によると、幼いポーを引き取ったのが、このアラン夫妻です。
一方、マリア・クレムはポーの叔母で、ヴァージニアはマリアの娘。のちにポーの妻となります。舞台ではマリアを澪乃桜季さん、ヴァージニアを詩ちづるさんが演じます。

「アラン」は幼いころに暮らした夫婦、「クレム」は叔母とその娘。このように名前を家族の組で見ると、長い役名が少し覚えやすくなります。
実母の名前もある。アラン夫妻と混ぜないでね
公式配役表には、紅咲梨乃さんが演じるエリザベス・ポーの名前もあります。ポー博物館は、実母を女優エライザとして紹介しています。表記が少し違って見えても、引き取ったアラン夫妻とは別の家族です。
実母、育てた夫婦、叔母、妻を一つの「家族」にまとめたあと、関係をもう一段だけ分ける。それだけで、同じ姓の人物を取り違えにくくなります。
人物の年齢や家庭の事情を全部調べてから見る必要はありません。最初の予習では、誰と誰がどんな関係かを押さえるだけで十分です。
編集者が多いのは、作家の生活にも関わるから
トマス・ホワイトは、美稀千種さんが担当する役。博物館の伝記では、ポーに雑誌の仕事を持ちかけた編集者として紹介されています。
詩や短編を書くことと、作品を雑誌で読者へ届けることは、つながりながらも違う仕事です。原稿を作る本人だけでなく、掲載や編集に関わる人の名前が出てくると、作家が社会の中で働いていたことも見えてきます。

配役表にはブレット、デイヴィッド、ハーパーに「編集者」と添えられています。また、ルイス・G・クラークやジョージ・グレイアム、ウィリアム・バートンなどの名前も載っています。
全員を「敵」か「味方」に分けなくても大丈夫
役名の一覧だけでは、舞台で何を言い、どんな場面で関わるかまでは決まりません。仕事の相手だから良い人、意見が違うから敵、と先に決めず、会話を見てから関係を確かめたいところです。
「今の相手は家族?それとも仕事で関わる人?」と立場をつかんでおくと、名前を全部覚えていなくても場面を追いやすくなります。
| 役名 | 2023年星組の担当 | まず見るつながり |
|---|---|---|
| エドガー・アラン・ポー | 天飛華音 | 主人公の作家 |
| ヴァージニア・クレム | 詩ちづる | 妻 |
| マリア・クレム | 澪乃桜季 | 叔母・ヴァージニアの母 |
| トマス・ホワイト | 美稀千種 | 雑誌の編集者 |
| 大鴉 | 鳳真斗愛 | 詩の題名を連想させる役 |
「大鴉」は人名ではない。詩を知ると役名が気になる!
鳳真斗愛さんが担当する「大鴉」は、ほかの役名と違って人間の姓名ではありません。ポーの代表的な詩『The Raven』、日本語で『大鴉』と呼ばれる作品が、背景を知る入口になります。
ポー博物館が掲載する詩は、失ったレノアを思う人物の部屋に、黒い鳥が現れるところから展開します。鳥が繰り返す「Nevermore」という言葉を、語り手がどう受け取るかが印象的な作品です。

「Nevermore」は「もう二度と」といった意味を持つ言葉です。同じ言葉が返ってくるたびに、質問する側の気持ちが揺れる。詩を詳しく知らなくても、この繰り返しを入口にすると読み始めやすくなります。
詩の人物と、現実の妻を一対一で結ばない
詩に登場するレノアと、歴史上のヴァージニアを、そのまま同じ人物として読んでしまうと、作品と伝記が混ざります。舞台の役名、詩の登場人物、作家の家族は、別々に確認しておきましょう。
大鴉という役が舞台でどんな姿や動きになるかは、実際の映像で見る楽しみに残しておけます。「詩の題名が、配役表では一つの役になっている」と気付くだけでも、次に目を向ける場所が増えます。
1809年、1845年、2023年。何の年なのかを分けてみよう
1809年はポーが生まれた年。1845年は『The Raven』が発表された年です。ポー博物館の掲載では、発表日は1月29日とされています。
そして2023年は、星組が『My Last Joke-虚構に生きる-』を上演した年。作家の生涯と、宝塚の公演を一つの年表に入れるときは、この違いを押さえておきたいですね。

作品の感想や放送の案内を検索すると、上演年とは違う年の記事も出てきます。映像を見る前は、記事が書かれた年だけでなく、公演の年と組を確認してみてください。
天飛さんのポーを見る前に、まず三役を確認しよう
最初に覚えるなら、主人公のポー、妻のヴァージニア、そして大鴉の三役をおすすめします。家族、創作、本人という入口がそろい、ほかの役を探すときの軸になります。

そのうえで、気になった場面の相手を配役表で探す。家族なら家族の関係図へ、編集者なら雑誌の仕事の説明へ戻る。この読み方なら、初めての作品でも一度に全部を覚えずに済みます。
気になった言葉は、誰に向かっていたのかな?
人物の名前が分かったら、場面を見るときの問いを一つだけ持ってみませんか。「誰と話している?」「何を書こうとしている?」「その言葉は誰に向かう?」の中から、気になるものを選べば十分です。


見終わったあとに、好きになった役名や気になった言葉を一つ残してみてください。そこから詩や短編へ進むこともできます。舞台と読書の入口がつながるのが、この題材を楽しむ一つの方法です。
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