『ワンス アポン ア タイム イン アメリカ』という長い題名。映画を知っていると、あの複雑な時間の流れを、宝塚でどう見せたのだろうと気になります。逆に舞台から入る方は、ヌードルスやマックスという名前だけでも少し戸惑うかもしれません。
2020年雪組の作品は、小池修一郎さんが脚本・演出を担当した世界初のミュージカル化です。公式インタビューでは、長い映画をそのまま縮めるのではなく、設定を変え、曖昧な部分に独自の解釈を加えたと語られています。
結末の答え合わせを先にするより、誰の人生を見ているか、同じ人物がどの時代にいるかをつかむ。そこから始めると、作品への入口が見つかります。
要点
ヌードルス・マックス・デボラの配役/映画が交差させる三つの時間/舞台化にあたって小池修一郎さんが語った変更と、人物の選択。
ヌードルスとマックスは仲間。デボラは、恋の相手です
2020年雪組でヌードルスを演じるのは望海風斗さん。マックスは彩風咲奈さん、デボラは真彩希帆さんです。最初はこの三人を、物語の中の名前と出演者名の両方で見分けてみましょう。
ヌードルスとマックスは、ニューヨークでギャングとして生きる仲間です。ヌードルスが思いを寄せるのがデボラ。友人と恋の相手では、彼の人生との関わり方が違います。

朝美絢さんのキャロルと、デボラは別の人物
朝美絢さんが演じるのはキャロルです。デボラ役の真彩希帆さんと合わせて、映像の出演者欄で確かめておくと探しやすくなります。
また、ジミーを演じるのは彩凪翔さん。小池さんのインタビューでは、ジミーの社会活動も、ヌードルスたちの運命を動かす要素として説明されています。
| 役 | 本公演 | 新人公演 |
|---|---|---|
| ヌードルス | 望海風斗 | 諏訪さき |
| デボラ | 真彩希帆 | 潤花 |
| マックス | 彩風咲奈 | 縣千 |
| ジミー | 彩凪翔 | 彩海せら |
| キャロル | 朝美絢 | 彩みちる |
表は左右にスクロールできます。表の参考:宝塚歌劇:本公演・新人公演の配役
新人公演の欄には、同じ役に別の出演者が並びます。本公演の配役を知りたいなら、先に列の見出しを確かめてください。

少年期、青年期、初老期。同じ人生を違う時代から見る
原作映画は、主人公の少年期、青年期、初老期という三つの時間を交差させる構成で知られています。宝塚の公式作品紹介も、この特徴を挙げています。
時代が変われば、姿や街の様子も変わります。しかし、見ているのは別々の主人公ではなく、時間を重ねてきた人物の人生です。人物名と、いまどの時代を見ているかを分けて考えると追いやすくなります。

同じヌードルスを、年齢の変化から見てみよう
ここでは、三つの年齢の段階を、理解のために並べています。少年期から初老期まで、この順番で舞台が進むという場面表ではありません。映画の構成の説明と、宝塚の具体的な場面順は区別します。
映画を見ていない方も、細かな謎をすべて解いてからでないと楽しめないわけではありません。今の出来事と、そこにつながる過去を意識しながら、人物の選ぶ言葉や歌を追ってみる。そのための小さな案内として図を使ってください。
長い映画を、名場面だけつないだ舞台にはしなかった
小池さんは公式インタビューで、一本物の宝塚では、フィナーレを除く物語を2時間10分程度に収める必要があると説明しています。
映画には、公開版のほかに、さらに長い版もあります。場面をそのまま順に持ち込めばよいわけではありません。舞台化にあたっては、映画と設定を変え、曖昧な部分に独自の解釈を加えたと語っています。

舞台で示された答えを、映画の唯一の正解にしない
映画の謎について、舞台での描き方を知りたい方もいるでしょう。ただ、小池さんが独自の解釈を加えたと説明している以上、それを映画の監督が示した唯一の答えと扱うことはできません。
同じ題材でも、別の表現として何を伝えようとしたかを見る。映画をよく知る方ほど、その違いを楽しめるのではないでしょうか。この記事では結末の解釈を先に決めず、公式に語られた舞台化の考え方を紹介しています。

映画は、どの版を見たかでも記憶が変わります
小池さんはインタビューで、原作映画には初回の劇場公開版のほか、4時間弱の完全版や、4時間を超えるエクステンデッド版があると説明しています。後から場面が加わった版もあるため、「映画ではどうだった?」と話すときは、見た版を確かめておくと会話がかみ合いやすくなります。
長い版でも、物語のつながりに疑問の残る部分があり、その謎めいたところにも魅力を感じているというのが、小池さんの見方です。舞台化は、単に上映時間を削る作業ではなかったのですね。何を補い、どこを解釈して人物の人生を伝えるかという、作り手の判断が加わっています。
ジミーを知ると、仲間たちの外の社会も見えます
彩凪翔さんのジミーについて、小池さんは、実在の労働組合指導者ジミー・ホッファがモデルの一人と考えられると説明しています。ヌードルスとマックスの友情や恋だけを追っていると見落としがちですが、労働者の権利を守る社会活動も、彼らの運命に関わっています。
当時の社会とギャングの関係が、個人の選択へ入り込んでくる。ジミーが登場したら、誰に何を働きかけているのかにも目を向けてみたいですね。主人公たちの外側で動く社会を知ると、成功や失敗を本人の性格だけで片づけずに見られます。
二人が、同じ出来事の前で違う道を選ぶ
小池さんの説明で印象的なのは、ヌードルスとマックスが、ある大きな出来事をめぐって、先へ進むか、とどまるかを選ぶという話です。
金や名声を得ることと、人生で幸せを感じることが、必ずしも一緒になるとは限らない。インタビューでは、その違いを人物の人生に重ねて語っています。誰が強いかだけでなく、何を選び、その後どう生きるのかが、舞台を見る手がかりになります。
ギャングを、ただ格好よい成功者として見る話ではない
主人公たちはギャングとして成り上がる人物です。小池さんは、人生の苦みや皮肉も描くこと、倫理的に美しいことばかりではない場面があることを説明しています。
補足
犯罪や人生の悲劇を扱う作品です。華やかな男役の姿とともに、登場人物の過ちや苦い選択も描かれます。
出来事の詳しい結末を知らなくても、ヌードルスとマックスが同じ価値観で進み続けるとは限らないと覚えておく。そうすると、二人が並ぶ場面の先にも関心が向きます。

映画を知っている人も、雪組から入る人も
映像の出演者を確かめたいときは、まず2020年雪組の配役表へ。映画との違いが気になったら、小池さんのインタビューへ戻る。この二つを使い分けると、感想や結末の説明だけに頼らず、作品の成り立ちをたどれます。
同じ映画名で出てくる情報にも、映画そのものの解説と宝塚の舞台の解説があります。出演者と公演年を確かめて、知りたい方へ進んでください。長い題名の先には、一つの人生を何度も見直したくなる入口があります。
今回参考にさせていただいた資料


