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ユーノス800のミラーサイクルに、なぜ過給機?吸気弁とリショルムを部品から読む

V型6気筒と中央のスクリュー式過給機を見せる一般化したエンジン断面イラスト 車
イラスト:当サイト制作(生成AI使用)。参考:自動車技術会:自動車用ミラーサイクルエンジンKJ-ZEM。Vバンク間の過給機という構成を示す一般化モデルです。KJ-ZEM純正部品の形状・寸法・配管の再現ではありません。

ユーノス800の説明に出てくる「ミラーサイクル」と「リショルムコンプレッサー」。燃費を狙ったエンジンなのに過給機も付くと聞くと、何をしたかったのか、少し分かりにくくなります。

吸気弁を遅く閉じて、実際に圧縮する区間を短くする。そのままでは減る吸気量を、過給機で補う。1993年のユーノス800では、この組み合わせが使われました。

ここでは当時のミラーサイクル搭載車を中心に、バルブ、ピストン、過給機の順で見ていきます。昔のカタログで名前だけ覚えていた方も、初めて聞いた方も、「どの部品が何を変えたのか」から読んでみてください。

要点

  • 遅く閉じるのは吸気バルブ
  • リショルムは吸う空気を増やすスクリュー式の過給機
  • 後年の自然吸気ミラーサイクルとは装備を分けて見る

» ピストンが上がり始めても、吸気弁を閉じないのはなぜ?

空気を閉じ込める時期を、後ろへずらす

エンジンのシリンダーには、上下するピストンと、空気の出入口を開閉するバルブがあります。吸気バルブは、空気を取り入れる側のふたに当たる部品です。

ピストンが下がり、吸気を終えて上がり始めても、そのバルブをしばらく開けたままにする。すると、入った空気の一部は吸気側へ戻ります。バルブが閉じたところから、残った空気が圧縮されます。

吸気弁が開いたままピストンが上がり、弁を閉じて圧縮し、燃焼後に下がる三段階
イラスト:当サイト制作(生成AI使用)。参考:東北大学・田中秀治:自動車エンジンの技術史(ミラー機構のスライド30〜34)。吸気弁遅閉じの概念図です。各段階の角度・位置・弁の形状は実機の縮尺やタイミングを表しません。

この説明で変えているのは、ピストンの上下の幅ではなく、空気を閉じ込める時期です。ピストンが下から上へ動く全区間を、同じ条件で圧縮に使うわけではなくなります。

燃焼後はガスが膨らみ、ピストンを下へ押します。圧縮に使う区間に対し、膨張に使う区間を大きく取ることで、燃料から仕事を取り出しやすくする考え方です。東北大学の公開講義資料でも、吸気弁の開閉で圧縮と膨張の関係を変える仕組みが説明されています。

「圧縮比10.0」と、実際に圧縮する区間は別に読む

自動車技術会の記録では、KJ-ZEM型の圧縮比は10.0。ここで「実際の圧縮を短くするなら、数字も小さいはずでは?」と迷いやすくなります。

諸元表の圧縮比は、基本的にはシリンダー内の大きい容積と小さい容積の比です。一方、吸気弁の閉じ方を含めて考えると、閉じ込めた空気が実際に圧縮される範囲は変わります。容積から読める比と、弁を閉じた後の圧縮を分けると、両方の説明がつながります。

補足

図は吸気弁遅閉じの働きを示す一般化した断面です。KJ-ZEMのバルブ角度、閉じるクランク角、ピストン位置を正確な縮尺で再現していません。

» 減った吸気量を補う、ねじ形の過給機

V型6気筒の間に入るリショルムコンプレッサー

吸った空気を一部戻すと、そのシリンダーの大きさで取り込める空気を、すべて使い切ることにはなりません。効率を狙う一方で、出力をどう確保するかが問題になります。

そこでユーノス800では、リショルムコンプレッサーを組み合わせました。ねじ形のローターを使って空気を圧縮し、エンジンへ送るスクリュー式の過給機です。自動車技術会の記録には、V型の左右の気筒の間、いわゆるVバンク間に搭載したことも載っています。

二つのねじ形ローターが見える一般化したリショルム式コンプレッサー
イラスト:当サイト制作(生成AI使用)。参考:自動車技術会:自動車用ミラーサイクルエンジンKJ-ZEM。スクリュー式の特徴を示す一般的な部品イラストです。KJ-ZEM純正ローターの歯数・隙間・ポートを再現していません。

リショルムの役目は吸気の圧縮。ミラーサイクルは空気の閉じ込め方、リショルムは空気を送り込む装置、と分けて読むと整理できます。

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私なら、カタログの二つの名前を「バルブの工夫」と「空気を足す部品」に分けてメモします。片方だけを覚えるより、なぜ組み合わせたのかを追いやすくなりますね。

開発論文は、過給した空気を冷やす装置まで一緒に扱う

過給で空気の量を補っても、圧縮によって温度が上がるため、冷却も必要になります。1995年に公表された開発者の論文では、高い圧力比での効率を考えたリショルムコンプレッサーと、二つのインタークーラーを組み合わせたことが説明されています。

インタークーラーは、過給後の吸気を冷やす熱交換器です。論文の抄録は、圧縮上死点付近の温度を低くすることに着目しています。単に過給圧を上げればよいのではなく、過給機の効率と冷却も含めてエンジンを成立させていた、と読めます。

短い独立した吸気管を使う工夫も抄録に記されています。吸気弁だけを遅く閉じたのではなく、吸気系を組み合わせて設計したエンジンだったのです。

» 1993年の2.3Lは、2.5L仕様と分けて見る

ユーノス800の全車がミラーサイクルではない

マツダの沿革では、1993年10月に2.5L V6車、11月にミラーサイクル車を発売したと記されています。ミラーサイクル搭載車は2,254ccのV6 DOHCで、当時の最高出力はネット220PS/5,500rpmでした。

1993年ユーノス800のミラーサイクル搭載車
項目当時の仕様
追加発売1993年11月(2.5L V6車は10月)
エンジン2,254cc/V型6気筒DOHC
過給機リショルムコンプレッサー
最高出力ネット220PS/5,500rpm
最大トルク30.0kg-m/3,500rpm

表は左右にスクロールできます。表の参考:マツダ:沿革1993年・ユーノス800の発売と諸元

注意

ユーノス800、あるいは後のミレーニアという車名だけでは、ミラーサイクル搭載車か決まりません。年式とエンジン、グレードを合わせて確かめてください。

1997年には車名がミレーニアへ変わりました。そのときのマツダの発表でも、2.5L V6車とミラーサイクル車は別に案内されています。「25G」というグレード名だけを見て、ミラーサイクルの排気量まで2.5Lと思い込まないようにしたいところです。

» デミオにもあるのに、過給機が見当たらない?

同じミラーサイクルでも、2007年の1.3Lは自然吸気

マツダは2007年、デミオ向けに自然吸気MZR1.3Lのミラーサイクルエンジンを発表しました。こちらは、吸気バルブを遅く閉じることに加え、S-VTというバルブタイミングの制御、CVTとの協調、車体の軽量化などを組み合わせています。

1993年ユーノス800の過給付き2.3Lと2007年デミオの自然吸気1.3Lを一気筒の概念で比較
イラスト:当サイト制作(生成AI使用)。参考:マツダ:2007年自然吸気MZR1.3Lミラーサイクル発表。片側一気筒で吸気装備を比べた概念図です。実機の全気筒数・部品形状・配置は表していません。ユーノス800はV6です。 比較対象の参考:マツダ:1993年のユーノス800。

つまり、「ミラーサイクルと書いてあればリショルム付き」と覚えると、別のエンジンで迷います。まず、いつの、どの車の話かを確かめる。1993年のユーノス800の2.3Lと、2007年デミオの1.3Lを分けて読むだけでも、説明の食い違いはかなり減ります。

ミラーサイクルという名前でも構成は違う
対象排気量・吸気見分けたい点
1993年 ユーノス800 ミラー車2.3L・リショルムで過給遅閉じと過給機を組み合わせる
2007年 デミオ MZRミラー車1.3L・自然吸気S-VTやCVTとの協調も使う

表は左右にスクロールできます。表の参考:マツダ:2007年自然吸気MZR1.3Lミラーサイクル発表、マツダ:沿革1993年・ユーノス800の発売と諸元

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私には、過給機まで使って効率と出力を両立させようとした点が、このユーノス800の面白さに見えます。ミラーサイクルという名前を覚えた次は、ボンネットの下で何を組み合わせたのかを見ると、時代ごとの工夫が分かります。

当時の燃費数値を見比べる際も、測定モードや組み合わせる変速機をそろえてください。現存する車の燃費や故障箇所を、当時の諸元だけで判断することはできません。整備の相談では車台番号やエンジンの仕様を伝え、実車を確認してもらいましょう。

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